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冷戦危機の舞台裏を描く『ブリッジ・オブ・スパイ』に見る、交渉と処世の極意

あなたは「橋」タイプ、それとも「壁」タイプ?

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2016年4月28日(木)11時00分
高森郁哉

『ブリッジ・オブ・スパイ』 5月3日にDVD/BDの発売・レンタルが始まる

世界の命運を握る極秘任務が、ある民間人に託された

 1950年代後半から60年代前半の世界は核の脅威が増し、東西冷戦が危機的状況を迎えていた。1960年にソ連領空で米軍のU-2偵察機が撃墜され、1961年には東西ドイツを分断する「ベルリンの壁」の建設が始まる。そんな時期、米ソ両国のスパイ交換の交渉という、まさに世界の命運を握る重大な任務が、ある民間人に託された――。

 5月3日にDVD/BDが発売・レンタル開始となるスティーブン・スピルバーグ監督最新作『ブリッジ・オブ・スパイ』は、実在の弁護士がさまざまな困難に立ち向かい、命懸けの交渉に臨む姿を描くサスペンス映画。第88回アカデミー賞では作品賞ほか6部門にノミネートされ、ソ連スパイを演じたマーク・ライランスが助演男優賞を受賞したことでも話題を呼んだ。

本稿ではまず、劇場で見逃した方々のために映画の概要と魅力を紹介する。また、改めて自宅で観賞したいという向きにも、作中で象徴的に描かれる「橋」と「壁」をキーワードに、好対照な2タイプの「働き方」や「生き方」に注目する視点を提案してみたい。

揺るがぬ信念、折れない心。主人公ドノヴァンの奮闘の行方は――

 1957年のニューヨークで、ソ連のスパイとして活動していたアベルが逮捕された。裁判の国選弁護人に任命されたのは、保険法専門で国際政治や謀略とは無縁のジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)。「誰でも公正な裁判を受ける権利がある」との信念に従い、世間から非難を浴びながらも法廷で熱弁をふるって、死刑が確実だったアベルに懲役30年の判決をもたらす。

 ふたたびドノヴァンに重要なミッションが託される。きっかけとなったのは、1960年に米軍のU-2偵察機がソ連の領空で地対空ミサイルにより撃墜され、拘束されたパワーズ飛行士が10年の禁固刑を宣告されたことだった。秘密裏にパワーズとアベルを交換することを画策したCIAは、その交渉役にドノヴァンを起用したのだ。ドイツに飛んだドノヴァンは、非公式の交渉のため、護衛もなくたった1人で東ベルリンに入るよう告げられる。

 さらに1961年に起きた事件も、ドノヴァンの交渉をより複雑にする。ベルリンの壁の建設が始まった頃、東側からガールフレンドを救い出そうとした米国人留学生プライヤーが、スパイ容疑で逮捕されてしまったのだ。ソ連側もCIAも1対1の交換を主張するなか、ドノヴァンはプライヤーを加えた2対1の交換を譲らない。一介の民間弁護士に過ぎない"普通の男"が、いよいよ交渉の地・東ベルリンへと単身乗り込み、想像を超える危険と困難に立ち向かっていく。

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