最新記事

自動車

熊本地震のショック全国に響くトヨタ、生産への影響は9万台にも

アナリストは減産規模8〜9万台、営業利益で500億円前後のインパクトと試算

2016年4月20日(水)19時22分

4月19日、熊本地震の影響で、トヨタ自動車が全国各地で生産停止に追い込まれている。部品調達が滞っているためだ。写真は2012年3月岩手県の同社工場で撮影(2016年 ロイター/Chang-Ran Kim)

 熊本地震の影響で、トヨタ自動車<7203.T>が全国各地で生産停止に追い込まれている。部品調達が滞っているためで、15日から停止した福岡県の工場に続き、車両組立工場の大半を19日から段階的に休止する。同社は2月にも愛知製鋼 <5482.T>の事故で国内組立工場を約1週間止め、約9万台の生産が遅れた。今回の地震でも、株式市場では最大9万台の生産に影響が及ぶとの見方が出ている。

地元九州、系列への依存度

 トヨタは中部、関東、関西、東北に広がる車組立工場で生産を19日から23日までに段階的に停止。最終的には26の生産ラインが止まる予定だ。25日以降の稼働については20日をめどに判断するが、全国的に操業を休止せざるを得なくなったのは、系列のアイシン精機<7259.T>の子会社などが被災し、部品供給が滞っているためだ。


【関連記事】震災対策に揺れる自動車産業、コスト競争とのせめぎ合いに直面

 熊本市内にあるアイシンの子会社2工場は電力供給が断たれており、ドアやエンジンなどの部品が生産できずにいる。自社の愛知県内にある各工場で代替生産をすでに開始しており、海外からの調達も検討しているが、工場再開のめどは立っていない。

 トヨタにとってボトルネックの1つが、ドアが急に開閉しないように制御する「ドアチェック」と呼ばれる部品で、アイシンは月90万本以上を生産。自動車業界アナリストらによると、トヨタの国内生産車の約9割にこのアイシン製ドアチェックが使われているという。

 トヨタ子会社のダイハツ工業<7262.T>も部品調達に支障が出て、中津工場(大分県中津市)と久留米工場(福岡県久留米市)の稼働を18日から22日まで見送る。両社とも輸送コスト抑制などの点から九州で生産する車には九州の部品をなるべく使うようにしており、ダイハツでは1台あたり平均約6割が九州で調達した部品という。

9月以降も生産挽回の必要も

 みずほ証券の森脇崇シニアアナリストは、トヨタの減産規模は8―9万台で「短期的には営業利益で500億円前後のインパクト」と試算。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは、減産規模6万3500台(ダイハツの7500台含む)で4―6月期の営業利益へのマイナス影響は300億円強と推計する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

為替円安、今の段階では「マイナス面が懸念される」=

ビジネス

AI集約型業種、生産性が急速に向上=PwCリポート

ビジネス

FDIC総裁が辞意、組織内のセクハラなど責任追及の

ワールド

トランプ氏大口献金者メロン氏、無所属ケネディ氏に追
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 10

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中