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租税回避地

世界最悪のタックスヘイブンはアメリカにある

Panama Papers: the Secret State of Delaware

法人を引き寄せて他州の税収を吸い取ってしまうブラックホールのような州があった

2016年4月12日(火)17時40分
ルーシー・クラーク・ビリングズ

魅力を競う デラウェアのほうがケイマン諸島(写真)より絶対的に有利な点とは? Franky Pictures-iStock.

 タックスヘイブン(租税回避地)と聞くと、普通はケイマン諸島やバミューダ諸島など、遠いカリブ海の島々を想像することだろう。

 オバマ米大統領は先日、「パナマ文書」とオフショアのタックスヘイブンを引き合いに出しながら、グローバルな租税回避の取り締まりを強化しようと世界の指導者に呼びかけた。

 だが実は、オバマが立つホワイトハウスからたった160キロのところに、れっきとしたアメリカのタックスヘイブンがある。デラウェア州だ。米東部のこの小さな州には、人間よりも多くの企業(公開・非公開)が存在している。最新の集計では、人口89万7934人に対し企業数は94万5326社だ。

 デラウェアは、株主の権利保護を主眼に法律を整備し、巨大で複雑な公開会社を呼び込んでいる。

 デラウェアのペーパーカンパニーに隠されている所得がどれぐらいあるかを正確に把握することは不可能だが、匿名会社の数を見れば、海外のタックスヘイブンに引けを取らない。

【参考記事】パナマ文書、中国の現状を解剖する

 デラウェアのどこがそんなに魅力的なのだろうか?

「企業に優しい風潮」と企業に特化した司法制度が、企業弁護士たちの巨大なネットワークや経営者を優遇する法律と相まって、デラウェアは租税回避者にとっての「夢の国」になっている。

 企業がデラウェアに行ってしまうおかげで、他州は税収を何十億ドルも損している。また秘密の匿名会社設立をもくろむ人々も多い。こうした会社を通じて租税を回避する個人や法人のせいで、連邦政府には計り知れない税収ロスが生じているのだ。

 米内国歳入庁(IRS)は、2006年における「タックスギャップ」の総額を4500億ドルと推定しており、うち3760億ドルは所得の過小申告のせいだとしている。

【参考記事】NYタイムズですら蚊帳の外、「パナマ文書」に乗り遅れた米メディア

金融秘密度ナンバーワン

 またタックスヘイブンに反対する英民間団体タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)は2009年、「金融秘密度指数」のランキングで、ルクセンブルクとスイスを抑えてアメリカを1位に挙げた。TJNは、その理由のひとつはデラウェア州だとしている。

「われわれの分析では、アメリカは最も深刻な地域の1つだ。改善はほとんど進んでおらず、透明性向上の取り組みの脅威となっている」と報告書には書かれている。「秘密度指数が2015年の6位から3位に上昇した米国は、2013年以降に評価が悪化した数少ない国のひとつだ」

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