最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

トランプ勝利で深まる、共和党「崩壊の危機」

2016年3月2日(水)16時10分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

 以上のように、「反トランプ連合」が結集できる見通しは、スーパーチューズデー終了時点では見えてきていない。スーパーチューズデーが「以降実施の予備選では勝者総取り(代議員数)」になる前の最後の段階で「候補を絞り込む」のが目的であるなら、共和党はその「絞り込み」には完全に失敗した。

 このままでは、共和党内に「全国レベルでは反トランプが53%(Fox News)」いるにもかかわらず、共和党はトランプの対抗馬を一本化できないまま、共和党は今後「勝者総取り」でトランプが代議員数をどんどん上乗せしていくのを「指をくわえて見ている」しかない。

 共和党指導部の中では、7月の党大会の時点で、トランプ候補を「1位だが代議員数の過半数は取れていない」状態に持っていき、党大会の場で代議員の談合によって「保守本流候補」にスイッチする作戦が囁かれていた。だがこのままでは、このシナリオは成立せず、トランプが予備選で「代議員の過半数」を取ってしまう可能性が見えてきた。

【参考記事】トランプは今や共和党支持者の大半を支配し操っている

 ワシントン政界では、「共和党の統一候補はトランプにジャックされた」ため、それとは別に「保守本流の大統領候補を無所属で立てる」という作戦すら検討されているという。ただその場合、南部の一部の州では「万単位の署名」を集めないと選管が候補を受け付けないそうで、そのためには「時間がない」という疑念の声もある。

 まさに共和党にとって「存亡の危機」だが、それは単純にトランプが嫌だとか、トランプではヒラリーに勝てないからという理由ではない。トランプの主張は「排外、政治的正しさへの反抗」といった「表層」をはがしてしまえば、その中身は、「小さな政府ではなく必要な福祉施策は行う」「自由貿易より国内雇用」「世界の警察官でなく仲介役」といった政策から成り立ち、妊娠中絶に理解を示すなど宗教保守派とも一線を画している。

 つまり、共和党の中核イデオロギーと真っ向から対立しているわけで、このまま「トランプを大統領候補として担いだ」格好では、上下両院、あるいは州知事の選挙は戦えなくなってしまう。

 党大会の場で「談合」して「トランプ外し」をしようとか、「保守本流の無所属候補」を擁立するというと、まるで陰謀渦巻くテレビドラマのようだ。だが、実はアメリカの長い歴史を見てみると、ポピュリズムと連邦政府の衝突というのは何度も経験している事態でもある。

 このまま保守本流が引き下がるとは思えない。共和党は「崩壊の危機」に瀕しているが、同時にトランプを「外し」てこの危機を乗り越えるために、驚くべきドラマを演出する可能性は残されている。


≪筆者・冷泉彰彦氏の連載コラム「プリンストン発 日本/アメリカ 新時代」≫

ニュース速報

ワールド

スコットランド首相がEU残留目指す、欧州議会指導部

ワールド

英次期首相決定が1週間後ずれ、9月9日まで=保守党

ビジネス

欧州銀行監督機構や清算機関の拠点、ロンドン撤退へ=

ビジネス

米GDP第1四半期1.1%増に上方修正、個人消費は

MAGAZINE

特集:BREXITの衝撃

2016-7・ 4号(6/28発売)

世界を揺るがせたイギリス国民投票のEU離脱派勝利。リーマン危機級のパニックが再びグローバル経済を襲うのか

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム
  • ニュース速報
  1. 1

    もし第3次世界大戦が起こったら

  2. 2

    英キャメロン首相「EU離脱派6つのウソ」

  3. 3

    ハーバードが絶賛する「日本」を私たちはまだ知らない

  4. 4

    ISISが3500人のNY「市民殺害リスト」をアプリで公開

    無差別の市民を選び出し、身近な標的を殺せと支持…

  5. 5

    未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会

  6. 6

    財政赤字を本気で削減するとこうなる、弱者切り捨ての凄まじさ

  7. 7

    「国家崩壊」寸前、ベネズエラ国民を苦しめる社会主義の失敗

  8. 8

    Windows10の自動更新プログラム、アフリカのNGOを危険にさらす

  9. 9

    搾取されるK‐POPのアイドルたち

  10. 10

    コンビニATM14億円不正引き出し、管理甘い日本が狙われる

    アフリカ諸国、東欧、中東などでは不正分析ソフト…

  1. 1

    レイプ写真を綿々とシェアするデジタル・ネイティブ世代の闇

    ここ最近、読んでいるだけで、腹の底から怒りと…

  2. 2

    英国のEU離脱問題、ハッピーエンドは幻か

    欧州連合(EU)にさらに権限を委譲すべきだと答え…

  3. 3

    伊勢志摩サミットの「配偶者プログラム」はとにかく最悪

    <日本でサミットなどの国際会議が開催されるたび…

  4. 4

    嫌韓デモの現場で見た日本の底力

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔7月…

  5. 5

    日本で盛り上がる「反知性主義」論争への違和感

    日本で「反知性主義」という言葉が流行している…

  6. 6

    間違い電話でわかった借金大国の悲しい現実

    ニューヨークに住み始めた僕は、まず携帯電話を手…

  7. 7

    移民問題が「タブー」でなくなったわけ

    ここ数年、僕たちイギリスの国民は、一部の政治…

  8. 8

    【市場】いよいよ終わりの始まりが始まった

    いよいよ終わりの始まりが始まった。それは日銀のマ…

  9. 9

    中古ショップで見える「貧困」の真実

    時々僕は、自分が周りの人々とは違った経済的「…

  10. 10

    パックンが斬る、トランプ現象の行方【後編、パックン亡命のシナリオ】

    <【前編】はこちら> トランプ人気は否めない。…

  1. 1

    メルセデス・ベンツの長距離EV、10月に発表=ダイムラー

    ドイツの自動車大手ダイムラーは、メルセデス・…

  2. 2

    米フロリダ州の乱射で50人死亡、容疑者は警備最大手に勤務

    米フロリダ州オーランドの、同性愛者が集まるナ…

  3. 3

    英国のEU離脱派と残留派、なお拮抗=最新の世論調査

    11日に公表された世論調査によると、英国の欧…

  4. 4

    英EU離脱は連合王国のリスク、元首相2人が警告

    英元首相のトニー・ブレア氏とジョン・メージャ…

  5. 5

    ECBのマイナス金利、銀行に恩恵=コンスタンシオ副総裁

    欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁…

  6. 6

    米国株式市場は続落、原油安と世界経済懸念が重し

    米国株式市場は2日続落で取引を終えた。原油が…

  7. 7

    NY市場サマリー(10日)

    <為替> 原油安や銀行株主導で世界的に株安が…

  8. 8

    焦点:タカタ再建、「ラザード」効果で進展か 車各社との調整に期待

    欠陥エアバッグ部品の大量リコール(回収・無償…

  9. 9

    インタビュー:世界的な低金利、エンダウメント型投資に勝機=UBSウェルス

    UBSウェルス・マネジメントのグローバルCI…

  10. 10

    英国民投票、「EU離脱」選択で何が起こるか

    欧州連合(EU)は6月23日の英国民投票を控…

定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
リクルート
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

0歳からの教育 育児編

絶賛発売中!

コラム

パックン(パトリック・ハーラン)

モハメド・アリ、その「第三の顔」を語ろう

STORIES ARCHIVE

  • 2016年6月
  • 2016年5月
  • 2016年4月
  • 2016年3月
  • 2016年2月
  • 2016年1月