最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

トランプ勝利で深まる、共和党「崩壊の危機」

スーパーチューズデーでトランプの対抗馬を絞り込むことに完全に失敗した共和党指導部

2016年3月2日(水)16時10分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

深まる混迷 トランプはこのまま予備選で代議員数の過半数を獲得して統一候補になるかもしれない Chris Bergin-REUTERS

 予備選最大のヤマ場「スーパーチューズデー」の結果、民主党はヒラリー・クリントン候補が勝利へ向けて大きく歩を進めた。ヒラリーの勝利演説は、本選を意識した威風堂々としたもので、すでに選挙戦のターゲットを「対共和党」に向けてきている。

 一方で、対する共和党は混迷の中にある。いや「崩壊の危機」と言ってもいい。

 ドナルド・トランプ候補が多くの州で勝利したということが問題なのではない。この時点では、2位以下の候補も代議員数を獲得できるので、代議員数ではまだ他の候補も追撃可能だし、そもそも今回の「トランプの勝ち方」は政界やメディアの関係者にとっては「想定内」の範囲だったからだ。

 問題は、他の候補の動向だ。

 まず、テッド・クルーズ候補だが、地元テキサスでは「仮に負けたら撤退」と言われていたが、フタを開けてみれば圧勝だった。しかも隣のオクラホマでも勝っていて、これで緒戦のアイオワを入れると3州で1位になった。この結果を受けてクルーズは、テキサスでの勝利集会で「反トランプ連合の結集軸は自分しかあり得ない」と胸を張った。

【参考記事】「トランプ降ろし」の仰天秘策も吹き飛ぶ、ルビオとクルーズのつばぜりあい

 一方で、保守本流の期待を受けていたマルコ・ルビオ候補は、善戦が予想されていたバージニアで勝てず、マサチューセッツでも票が伸びずに3位に終わった。では「ボロ負け」かというと、決してそうではなく、「穏健保守の票が中道派のケーシック候補に流れた」ための後退だという立派な説明がついている。さらにミネソタでは1位になり、これで「本命のくせに、まだ1州も勝っていない」という批判も免れることになった。

 つまり、両候補とも「トランプ追撃に必要な勢いは得られてないが、かといって撤退するような状況にもない」。

 さらにオハイオ州知事のケーシックは、3月15日の地元オハイオの予備選までは歯を食いしばっても選挙戦を続けると見られていたが、今回のマサチューセッツ(2位)などでの善戦を受けて、「4位なりの勢い」をつけている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発、日経が終値ベースで最高値更新 ハイ

ビジネス

インタビュー:赤字の債券トレーディング再編、連携強

ワールド

ポーランド、領空侵犯の無人機撃墜 ウクライナ攻撃中

ワールド

アジアのクリーンエネルギー推進、化石燃料補助金が足
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題」』に書かれている実態
  • 3
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒否した母親、医師の予想を超えた出産を語る
  • 4
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 5
    富裕層のトランプ離れが加速──関税政策で支持率が最…
  • 6
    カップルに背後から突進...巨大動物「まさかの不意打…
  • 7
    ドイツAfD候補者6人が急死...州選挙直前の相次ぐ死に…
  • 8
    もはやアメリカは「内戦」状態...トランプ政権とデモ…
  • 9
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 10
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 4
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 5
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 6
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 7
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 8
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 9
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 10
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中