最新記事

為替

シュリンクする世界の外為市場、取引高も人員も減少進む

2016年2月14日(日)09時34分

 国際決済銀行(BIS)の1995年の調査によると、20年前の1日の平均取引高は1兆2000億ドルで、初めて1兆ドルの節目を超えた。

 しかし、為替指標の不正操作スキャンダルが2013年に発覚し、複数の銀行が数十億ドル規模の罰金を科されたほか、数十人から数百人の規模で世界のトレーダーが職務停止や解雇に追い込まれ、業界全体に長きにわたって暗い影を落とした。

 グローバル金融危機をきっかけに実施されたさらに多くの規制変更によっても、為替の取引リスクを積極的に取ろうとする能力が抑えられた。

 リスク管理、調査、システム技術への支出が増大する中で、銀行は資本コストや事業コストの増大にも対処しなければならず、もはや自己勘定で為替のトレーディングを行うことはできなくなった。

 アナリストの一部は、外国為替市場の相場変動率が比較的に低めだったことが、この数カ月間の取引高減少に一定の役割を果たしたとみている。相場の方向性が定まらない中で為替のスポット取引高は減少し、為替オプションなどデリバティブ商品の需要も落ち込んだ。

 チャプデレーン(ニューヨーク)の為替部門のマネジングディレクター、ダグラス・ボースウィック氏は「ゼロ金利と非常にハト派的なグローバル環境ではボラティリティは低下する。ボラティリティが抑えられている時に、取引高は急減する」と話す。

 トレーダーたちは不安定な金融市場や中国の景気減速によって資産価格、インフレ率、成長、中銀の政策が今年どの方向に向かうのかについて大幅な再考を迫られることから、一定程度のボラティリティ上昇を期待している。

 しかし、市場の混乱が為替の取引高増加につながるかどうかは疑わしい。

 

[ロンドン 11日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

三井住友FG、インド大手銀行に2400億円出資 約

ビジネス

米国は最大雇用に近い、経済と労働市場底堅い=クーグ

ビジネス

米関税がインフレと景気減速招く可能性、難しい決断=

ビジネス

中国製品への80%関税は「正しい」、市場開放すべき
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中