最新記事

為替

シュリンクする世界の外為市場、取引高も人員も減少進む

外為取引を行う欧州の上位10銀行のトレーダーは、過去3年間で3割も減少

2016年2月14日(日)09時34分

2月11日、世界で最も大きい市場である外国為替市場のステータスは、過去数十年にわたるグローバル化の広がりや規制緩和、金融サービスの発展によって築き上げられた。近いうちにその座を明け渡す可能性は低い。しかし、栄光の日々は過ぎ去った。写真はソフィアで昨年3月撮影(2016年 ロイター/Stoyan Nenov)

 世界で最も大きい市場である外国為替市場のステータスは、過去数十年にわたるグローバル化の広がりや規制緩和、金融サービスの発展によって築き上げられた。近いうちにその座を明け渡す可能性は低い。しかし、栄光の日々は過ぎ去った。

 銀行規制の強化や、新興国ブームの衰え、そして長引く世界の成長や通商の伸び率鈍化が打撃となり、大手銀行の為替トレード部門における全体の市場の出来高や雇用の水準は縮小の一途をたどっている。

 外為取引を行う欧州の上位10銀行が雇用するトレーダーの数は、過去3年間に30%減少した。英イングランド銀行(中央銀行、BOE)とニューヨーク連邦準備銀行が先月発表した統計も、取引高が3年ぶりの低水準に落ち込んだことを示している。

 業界ウォッチャーによれば、1日平均6兆ドル近い取引高を記録する日は二度と訪れないという。

 業界分析会社コアリションによると、欧州で営業する上位10行だけで為替トレーディングデスクの従業員は332人で、2012年の475人から30%減少した。このうち最前線のポストの圧倒的多数はロンドンに置かれている。

 欧州の中央銀行で働くバンカーは、1日の平均取引高が6兆ドル前後だった「2014年末が、世界の為替取引のピークだった」と話す。

 多数者間資金決済サービスを提供するCLS銀行のデータによると、1月の1日当たりの平均取引高は4.8兆ドルとなり、前年同期比9%減少。ピークの6兆ドル弱を大きく下回った。

 世界最大の為替取引センターであるロンドンやニューヨークの一部の大手銀行のトレーディングデスクはこの1年、売買頻度の高い円やスイスフラン、豪ドルなどの通貨の取引高の減少に苦しんでいる。

 昨年1月にスイスフランの急騰で多くの人が巨額の損失を計上したことを契機に、大手銀行は小規模なヘッジファンド型の事業の数を厳しく取り締まるようになり、レバレッジ比率が高く投機的な取引の伸びは抑えられた。

 この傾向は最近の英米の中央銀行の調査で顕著だ。2015年4─10月の1日当たりの取引高はロンドンで前年同期比21%減、ニューヨークでは26%減となった。

 機関投資家向けの独立系ブローカーでヘッジファンドも運営するITGのディレクター、ジム・コクラン氏は「5兆ドル超の取引高が恐らく近い将来にピークになる」と話した。

指標不正操作も影

 外為市場は世界の貿易や経済活動を概観するのに使われる。世界で最も大きな金融市場であり、過去数十年間にわたって着実に成長してきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

再送米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中