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人権問題

背景に中国国内における江沢民告訴――中国で入国拒否されたミス・カナダ

2015年12月21日(月)17時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 しかしかつて法輪功学習者が増えたのは、中国の医療制度が充実していないために、健康を保つ目的で気功を始めたのが原因だったことは確かだとみなしている。改革開放により、それまで国家によって守られていた「揺りかごから墓場まで」の生涯保障制度は崩れ、その一方で近代国家としての医療制度の充実も進まない時期が長く続いた。気功を通して健康を保とうという動きはまたたく間に中国全土に広がった。中南海の中にも学習者がいた。問題は、気功の修練の中には「精神の安定」や「自由な精神の拠り所」を求めるという出発点があるということだ。これは中国共産党が「信仰」として強要している社会主義の核心的価値観と相いれないという要素を持っているだけでなく、「精神的に横につながると反政府運動になる危険性を持っている」という警戒心から弾圧を始めたという事実は認識しておいた方がいいだろう。

(その中には法輪功に同情的だった当時の朱鎔基首相に対する江沢民の激しい嫉妬という「中南海内の闘い」も含まれているが、話が長くなるので、ここでは省く。)

遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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