最新記事

米中関係

訪米初日、習近平はどう迎えられたか?【習近平 in アメリカ②】

2015年9月25日(金)12時55分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 23日はボーイング社を訪れて組み立て工場を見学し、航空機300機購入という大盤振る舞いでボーイング社を惹きつけた。中国の国有企業が製造する中国旅客機とボーイング社が合弁して旅客機の最終組み立て工場を中国に建設することでも合意した。しかし現地ボーイング社の社員は、自分たちの雇用が奪われるのではないかと抗議している。

 習近平国家主席はその後、中米両国企業の大代表団が参加する米中企業家座談会で講演し、つぎのように語った。

――米中貿易には巨大なポテンシャルがある。2014年、中国は外国企業から1285億ドルという世界一の直接投資を受けている。中国の中間層(中産階級)は3億人に達しており、米国の人口に匹敵する。未来の10年では2倍(6億人)となり、世界の巨大市場となる。これからの5年間で、アメリカから10兆ドルに相当する輸入を実行する計画であり、観光客は5億人を越えるだろう。われわれはアメリカの大企業が中国で支社を設立し、中小企業が中国で新たな事業を開拓していくことを待っている。

 マイクロソフトやアップルなど、注目の企業が参加している。
中国の本心としては中国人民解放軍30万人削減に伴い、軍のハイテク化を狙っているので、笑顔を振りむきながらも、実はアメリカのハイテクのノウハウを中国のものとしたい魂胆がある。

 また、まずはアメリカの経済界を惹きつけ、25日の米中首脳会談で提議されるであろう対中強硬姿勢を和らげる魂胆も丸見えだ。

習近平シアトル到着に合わせた米国防総省非難声明

 アメリカの国防総省(俗称ペンタゴン)は、9月22日、「9月15日に中国軍機が米軍の偵察機に接近した」として、中国の軍事行動に対する非難声明を出した。

 事態が起きたのは「9月15日」だ。

 中国東部の黄海上空で、中国軍 のJH7戦闘機2機がアメリカ軍のRC135偵察機に急接近し、危険な行動をとったということだ。
なぜ、わざわざ、習近平がシアトルに到着した「9月22日」を選んで発表した思惑はどこにあるのか?

 そこには次の米大統領選に対する共和党側のオバマ大統領に対する牽制とも解釈することができる。

 アメリカ議会では上院下院とも共和党がオバマ大統領の民主党の議席を上回り、圧倒的な優位を保っている。次期大統領選で民主党候補が当選するのか共和党が当選するのかは、アメリカ国民の大きな関心事だ。共和党としては、習近平と「蜜月を演じてきた」オバマ大統領をこき下ろし、大統領選に勝ちたいという強い渇望があるだろう。

 そのためには、習近平訪米は「攻撃のための」またとない絶好のチャンスだ。

 そうでなくとも、米国防総省は快い対中感情を持っていないと、中国政府関係者は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 

ワールド

ウクライナ、米国の和平案を受領 トランプ氏と近く協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中