最新記事

人権問題

無国籍住民に大量の外国籍を買うクウェートの真意

古くからこの土地にいた遊牧民ベドウィンの子孫を他国に追放しようとする措置に人権団体が反発

2014年11月20日(木)16時25分
ジョシュア・キーティング

空しい抗議 治安警察に連行される砂漠の民ベドウィンの子孫たち Hani Abdullah-Reuters

 オバマ政権の移民制度改革でアメリカに滞在する不法移民のうち最大500万人が国外追放を免れる見通しになった。だが大量の「不法滞在者」を抱える国はアメリカだけではない。クウェート政府も先日、無国籍住民に対する新たな施策を発表した。その内容はあきれるほど「斬新」なものだ。

 クウェートには「ビドゥン」と呼ばれる無国籍者が10万人余りいる。彼らは主に遊牧民のベドウィン族の子孫で、1961年のクウェート独立後、様々な事情で市民権取得の手続きができないまま今に至っている。

 ビドゥンの多くはクウェートで生まれ育った人たちだが、クウェート政府は彼らを不法移民として扱い、市民権要求をたびたび撥ねつけてきた。市民権がないために、ビドゥンはクウェートでは大半の職に就けず、医療や教育ばかりか、法的な保護すらまともに受けられない。

 クウェート内務省は11月、無国籍住民の扱いに関する新方針を発表。ビドゥンに市民権が与えられることになった。ただし、クウェートの市民権ではない。クウェート政府はビドゥンのために東アフリカの島国コモロ連合の「経済的市民権」、つまりカネで買える市民権を大量に購入する計画だ。

 コモロはアラブ連盟の加盟国で、すでにアラブ首長国連邦の要請に応じ、同国の無国籍住民にパスポートを発行している。クウェート政府の要請に応じるには、まずクウェートに大使館を開設する必要がある。

 ビドゥンはコモロ諸島に送り込まれるわけではない。人口80万人のコモロ連合は外国人に市民権を売っている。近年、オフショアの事業活動をする人などに市民権を売る国が増えているが、クウェート政府が計画しているような大量購入はこれまで行われたことがない。コモロの市民権を取得すれば、ビドゥンは公式に地位を保証され、クウェート国内でも職に就きやすくなり、福祉サービスを受けやすくなると、表向きクウェート政府は説明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送中国GDP伸び率、第4四半期は3年ぶり低水準 

ワールド

イスラエル、「ガザ執行委員会」の構成に反発 米国に

ワールド

トランプ氏、グリーンランド領有再主張 「ロシアの脅

ワールド

中国の人口、4年連続で減少 25年出生率は過去最低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中