最新記事

テロ

欧米社会に忍び寄るISIS「首切り」の恐怖

オーストラリア市民を対象にしたテロ計画の発覚で緊張が高まっている

2014年9月24日(水)17時11分
マーク・ピゴット

警戒態勢 市民の首を切るという強迫を受けたオーストラリアでISISメンバーの捜索が始まった Reuters

 イスラム教スンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国)の恐怖は、シリア、イラクの国境を越え、欧米各国の本国にまで忍び寄っている。

 オーストラリアのメルボルン郊外で今週、警察の取り調べに出頭した18歳の男が2人の警察官をナイフで刺し、射殺された。その後警察は、男が車に爆発物を隠していないかどうか調べたが、不審物は見つからなかった。

 この男は、イスラム過激派のメンバーとして警察の監視対象だった。メルボルン郊外の警察署で男は、テロ対策チームの2人の警察官の取り調べを受けていた。当初は警察官と握手を交わし、落ち着いた様子だったという。

 ビクトリア州警察のルーク・コーニリウス副署長によると、男は突然攻撃的になって2人を刺した。「男が攻撃してくることはまったく想定していなかった。そのため射殺する以外の選択肢は無かった」

 現地の報道によれば、名前が公表されていないこの男は、オーストラリアのアボット首相を脅迫した疑いがある他、自宅でISISの旗を掲げていたという目撃情報が当局に寄せられている。しかし警察はこうした点については明らかにしないだろう。

 オーストラリアでは、先週国内でのテロ警戒レベルが引き上げられ、ISISの指示を受けてテロを計画した疑いで15人がシドニーやメルボルンで拘束された。テロ警戒で緊張が高まるさなかで今回の事件は起きた。オーストラリアは、イラク、シリアからのISIS掃討を目指すアメリカ主導の「有志連合」に軍部隊を派遣している。

 警察が先週摘発したテロ計画では、ISISから指示を受けた容疑者が、街中で拉致した一般市民の首を切って殺害し、ISISの旗に包む様子をビデオ映像で公開する計画だったという。射殺された男が、このテロ計画に関係していたかどうかは不明だが、男のパスポートは最近、無効処分になっていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港大規模火災、死者159人・不明31人 修繕住宅

ビジネス

ECB、イタリアに金準備巡る予算修正案の再考を要請

ビジネス

トルコCPI、11月は前年比+31.07% 予想下

ワールド

プーチン氏、一部の米提案は受け入れ 協議継続意向=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 9
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 10
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中