最新記事

新首相

どん底イタリアに奇跡を起こす男

猛烈な仕事人間でツイッター中毒……イタリア再生という不可能な任務に挑むマッテオ・レンツィの素顔と実力

2014年4月11日(金)12時04分
シルビア・マルチェッティ

期待の星 イタリア史上最年少の39歳で首相に就任したレンツィ Elisabetta Villa/Getty Images

 第二次大戦中にファシスト政権が倒れて以来、イタリアでは約70年間に60以上の内閣が誕生しては倒れてきた。近年、政治はますます機能不全に陥り、長引く不況にも出口が見えない。そんなどん底状態の国に、すい星のように「救世主」が現れた。

 実際、イタリア史上最年少の首相となったマッテオ・レンツィ(39)は、神を引き合いに出すのが好きだ。親しい友人たちの話によると、レンツィはカトリック教会の司祭に「マッテオ、確かに神はおられる。だが君ではない。肩の力を抜きなさい」と諭された話をするのが好きだという。

 レンツィは、歴代政権がことごとく失敗してきたイタリアのルネサンス(再生)を、自分なら実現できると信じている。その自信はどこから来るのか。レンツィとはいったい何者なのか。そして彼の政権は十分な期間続くのか。

 先月半ばに就任したばかりのレンツィだが、猛烈な仕事人間でツイッター中毒であることは既によく知られている。

 ジョルジョ・ナポリターノ大統領から首相に指名された2分後には、「行くぞ、行くぞ!」と興奮気味のツイートをした。90万人以上のフォロワーに向けて朝6時40分に「政府の緊急案件を処理中。#おはよう」とツイートしたこともある。首相官邸の中庭の写真付きだ。

 側近たちは、レンツィを3分以上座らせておくのに苦労している。側近も番記者も、これから4年間はほとんど眠れないと覚悟している。何しろレンツィは朝は早いし、寝るのは午前2時。日曜日も仕事をする。

「マッテオは考えるのも行動を起こすのもスピーディーな世代の人間だ。結構なことだが、危なっかしいところもある」と言うのは、レンツィの右腕のグラツィアーノ・デルリオ官房長官(53)だ。

 わずか2カ月足らずの間にフィレンツェ市長から民主党書記長(党首)、さらには首相へと上り詰めたレンツィだが堅苦しいところはない。週末はジーンズに腕まくりをした白いシャツがお気に入りのスタイルだ。高校教師の妻と3人の子供がいる。

 平日はダークスーツにネクタイを締めているが、イタリア首相として初めて議会にノートパソコンを持ち込むなど、政治の世界に次々と新しい風を吹き込んでいる。バラク・オバマ米大統領を敬愛するレンツィだが、彼自身も演説上手で知られる(ちなみにオバマは今月末にイタリアを公式訪問する予定だ)。

「あれは天賦の才能だ」と語るのは、大学時代の同級生でもあるフィレンツェ市のダリオ・ナルデッラ副市長だ。「マッテオの周囲でメディア戦略に一番たけているのは彼自身だろう。彼なら人民のリーダーになれる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国中古住宅価格、4月は前月比0.7%下落 売り出

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ビジネス

米関税で見通し引き下げ、基調物価の2%到達も後ずれ

ワールド

パレスチナ支持の学生、米地裁判事が保釈命令 「赤狩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中