少林寺本家が拝金主義で大儲け!
中国メディアは、釈はMBA(経営学修士号)を持っていると主張する。広州日報は10年、「少林寺に現代的な経営技術を取り入れるため、MBAの勉強をした」という本人の発言を掲載した。だが釈は、MBA報道は誤りだと強調する。「彼らが勝手にそう言っているだけだ」
中国では、世間の評判が著名な人物の命取りになりかねない。釈も悪い噂を消そうと懸命だ。特に問題になったのは、昨年5月に売春婦に会う姿が目撃されたというスキャンダル。少林寺側は、女性たちを改心させるために行ったと釈明した。
この件について釈は、「何十年も僧籍にある人間にはあり得ない話だ」と主張する。旅行代理業から少林寺の外交担当に転身したは、買春の噂は「妄想」であり、「仏教では妄想を口にする人間は報いを受ける」と言った。
貧しい安徽省の農村で育った釈は、若い頃から武術の才能を発揮した。10代で少林寺に入ると短期間で地位を上げ、22歳で寺院経営のトップに。その2年後には中国各地を巡回する武術ツアーの責任者となった。
愛人・子供・隠し金の噂
90年前半には地方議会の議員になった。だが、共産党員ではないと強調する。「党員は宗教を信じてはならないからだ」
少林寺は他の合法的な宗教組織と同じく、国家宗教事務局の管理下にある。「毎年、省政府やさまざまな宗教団体の代表と会うが、誰もが政府の宗教政策に満足している」と釈は言う。
釈の買春スキャンダル後、同事務局はこんな声明を出した。「われわれは噂を強く非難する。釈を中傷しただけでなく、少林寺のイメージ、さらには中国仏教の名声を傷つけたからだ」
昨年10月には別の噂が浮上した(情報源は元門弟らしい)。釈はドイツに愛人と子供を住まわせ、外国の銀行に30億ドルもの隠し金があるというものだ。少林寺は「悪意ある捏造」だと否定。この一件に関するネット上の発言は禁止され、少林寺は噂を流した人物を突き止めるため、約8000ドル相当の報奨金を出すと申し出た。
体制寄りなのに、国内より欧米メディアに受けがいい──そんな中国人は、釈くらいだろう。
昨年6月、釈は米ニュースサイトのハフィントン・ポストのインタビューで、武術家のステーシー・ネモアから「少林寺のライフスタイルを誰もが取り入れたら、世界の政治やモラルはどう変わるか」と質問された。答えは「もっと素晴らしくなるだろう」というものだった。「もっと平和に、もっと完璧に」
中国のネット上では、役人が高給を取り、子供を外国の寄宿学校に入れ、愛人を囲っているという噂が氾濫している。だからこそ中国のメディアは、権力を利用できるのにその気はないと言う釈に驚嘆したり、逆に疑いの目を向けたりするのだろう。
「メディアの取材は受けたくない」と、釈は言った。「うっとうしく、退屈な質問が多い」
それより釈は仏教のことを語りたがった。「武術の目的は平和だ。少林拳を学べば、護身術だということが分かる。まず身を守る。攻撃はその次だ」
[2012年9月 5日号掲載]