最新記事

中国社会

少林寺本家が拝金主義で大儲け!

2012年10月16日(火)14時34分
アイザック・ストーン・フィッシュ

 中国メディアは、釈はMBA(経営学修士号)を持っていると主張する。広州日報は10年、「少林寺に現代的な経営技術を取り入れるため、MBAの勉強をした」という本人の発言を掲載した。だが釈は、MBA報道は誤りだと強調する。「彼らが勝手にそう言っているだけだ」

 中国では、世間の評判が著名な人物の命取りになりかねない。釈も悪い噂を消そうと懸命だ。特に問題になったのは、昨年5月に売春婦に会う姿が目撃されたというスキャンダル。少林寺側は、女性たちを改心させるために行ったと釈明した。

 この件について釈は、「何十年も僧籍にある人間にはあり得ない話だ」と主張する。旅行代理業から少林寺の外交担当に転身したは、買春の噂は「妄想」であり、「仏教では妄想を口にする人間は報いを受ける」と言った。

 貧しい安徽省の農村で育った釈は、若い頃から武術の才能を発揮した。10代で少林寺に入ると短期間で地位を上げ、22歳で寺院経営のトップに。その2年後には中国各地を巡回する武術ツアーの責任者となった。


愛人・子供・隠し金の噂

 90年前半には地方議会の議員になった。だが、共産党員ではないと強調する。「党員は宗教を信じてはならないからだ」

 少林寺は他の合法的な宗教組織と同じく、国家宗教事務局の管理下にある。「毎年、省政府やさまざまな宗教団体の代表と会うが、誰もが政府の宗教政策に満足している」と釈は言う。

 釈の買春スキャンダル後、同事務局はこんな声明を出した。「われわれは噂を強く非難する。釈を中傷しただけでなく、少林寺のイメージ、さらには中国仏教の名声を傷つけたからだ」

 昨年10月には別の噂が浮上した(情報源は元門弟らしい)。釈はドイツに愛人と子供を住まわせ、外国の銀行に30億ドルもの隠し金があるというものだ。少林寺は「悪意ある捏造」だと否定。この一件に関するネット上の発言は禁止され、少林寺は噂を流した人物を突き止めるため、約8000ドル相当の報奨金を出すと申し出た。

 体制寄りなのに、国内より欧米メディアに受けがいい──そんな中国人は、釈くらいだろう。

 昨年6月、釈は米ニュースサイトのハフィントン・ポストのインタビューで、武術家のステーシー・ネモアから「少林寺のライフスタイルを誰もが取り入れたら、世界の政治やモラルはどう変わるか」と質問された。答えは「もっと素晴らしくなるだろう」というものだった。「もっと平和に、もっと完璧に」

 中国のネット上では、役人が高給を取り、子供を外国の寄宿学校に入れ、愛人を囲っているという噂が氾濫している。だからこそ中国のメディアは、権力を利用できるのにその気はないと言う釈に驚嘆したり、逆に疑いの目を向けたりするのだろう。

「メディアの取材は受けたくない」と、釈は言った。「うっとうしく、退屈な質問が多い」

 それより釈は仏教のことを語りたがった。「武術の目的は平和だ。少林拳を学べば、護身術だということが分かる。まず身を守る。攻撃はその次だ」

[2012年9月 5日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

予備費8000億円、燃料補助金基金に繰り入れ=城内

ワールド

米国防総省がメディア規制再改定、取材拠点を移転 記

ワールド

アジア経済は危機突入の恐れ、シンガポール外相がイラ

ワールド

中国が「一方的な批判や威圧的措置強める」、日本政府
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」した──イスラエル首相
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 5
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 6
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 7
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 8
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中