最新記事

平和

天国? 地獄? 新しいソマリア・リゾート

イスラム過激派の追放後、首都モガディシュは「インド洋の楽園」として再出発したが

2012年6月14日(木)15時14分
エリン・コンウェイスミス

風光明媚 映画『ブラック・ホーク・ダウン』に描かれたモガディシュとは別世界 Ismail Taxta-Reuters

「世界で最も危険な都市」の一つと長年恐れられたソマリアの首都モガディシュが、イメージを一新しようとしている。インド洋の楽園として、だ。

 この数カ月間にモガディシュの海岸を訪れた外国人記者たちは、モガディシュの海の美しさや活きのいいロブスターをほめちぎってきた。レストランやホテルを始めた起業家もいる。

 モガディシュのある地区は、「立入危険区域」から「見逃せない観光スポット」に生まれ変わったと、この地区の新しいレストランを紹介するAP通信の記事はいう(ただし客はセキュリティ・チェックを受けなければならないし、店内には武装したボディーガードがいる)。「そばにあるラウンジの長椅子では、海水浴に来た男性が日光浴。全身を覆う水着姿て海に飛び込むイスラム教徒の女性もいる。メニューにはアイスクリームやシーフード、水パイプなどが並び、ないのは政府に禁止されたアルコールだけだ」

 アルカイダとつながりのあるイスラム過激派組織「アルシャバブ」は昨年、政府軍とアフリカ連合(AU)軍部隊の反攻でモガディシュから追放された。

 数十年もの内戦の間に世界に散ったソマリア難民も帰国し始めた。隣国ケニアに避難していた外国の大使館や国連職員も同様だという。

 先週末には、アメリカのアフリカ担当国務次官補ジョニー・カーソンもモガディシュを訪問した。1993年、米軍が戦闘ヘリ2機と18人の兵士を失う大失態を演じ『ブラックホーク・ダウン』という映画にもなった戦闘以来、最も位の高い政権幹部だ。

 実際は、外国記者たちが興奮するほどの楽園とはまだ言えない。多くの建物は銃弾でハチの巣にされ、あるいは爆弾で瓦礫と化したままだ。自爆テロもあるし道路脇には爆弾も仕掛けられている。

 3月には、閉鎖されていた国立劇場も20年ぶりに再開した。だが数週間後、アルシャバブとつながりのある民兵たちの自爆テロで8人の死者が出た。

 だが、ソマリア政府の広報担当者アブディラマン・オマール・オスマンは楽観的だ。今のモガディシュは、イラクのバグダッドやアフガニスタンのカブールよりは安全になったし、観光客誘致のため観光大臣も任命するかもしれないという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中