最新記事

日本

菅直人という名のストレステスト

問題は震災対応や資質だけではない。責任逃れを続ける「第4の災害」は、政治をいかにメルトダウンさせたか

2011年7月13日(水)11時06分
横田 孝(本誌編集長/国際版東京特派員)、長岡義博(本誌記者)

破壊屋 菅は日本にまれにみるダメージをもたらしている Toru Hanai-Reuters

「ペテン師」「最低の人間」「無能」「権力にしがみつきたいだけ」「存在そのものが大災害」──日本の歴代総理大臣の中で、菅直人首相ほど罵詈雑言を浴びせられた人物はいただろうか。

 東日本大震災と福島第一原発事故をめぐる対応の迷走ぶりや、退陣表明をしても「居座り」続けることへの不満から一時、国会内の民主党国会対策委員会の役員控室には「宰相不幸社会」「百害あって一利なし」と菅を批判する紙が貼られたほどだ。

 国会議員として品位に欠ける行為かもしれないが、菅がこの国を不幸に向かわせているという指摘は、あながち間違いではない。

 震災から4カ月。菅はその間、震災復興や原発事故の収束を遅らせるような言動に終始してきた。そして先週、菅が復興相に任命した松本龍が放言騒動を起こしてわずか9日で辞任。自らの発案で原発再稼働の条件として持ち出したストレステスト(安全性評価)は「唐突過ぎる」と批判を浴び、海江田万里経済産業相の辞任騒ぎに発展、早期退陣論が再燃した。

 当の菅は「責任を感じている」らしいが、実際に責任を取るつもりはないようだ。まるでこの国全体が、どれだけの政治的な混乱に耐えられるか、ストレステストにかけられているようだ。

 確かに、菅に向けられた批判の中には感情論の域を脱しないものもある。日本はこれまで「何となく嫌い」「けしからん」というイメージだけで政治家や総理大臣の首を何度もすげ替えてきた。失言や形式的な政治とカネの問題でやり玉に挙げられ、多くの政治家が失脚させられてきた。

 ただどんなに不人気で1年足らずで辞任した総理でも、実績の1つや2つはあるものだ。安倍晋三元首相は一時的とはいえ、「政冷経熱」と言われた日中関係を改善させた。麻生太郎元首相は、世界金融危機の余波を最小限に食い止めようと景気刺激策を断行。その政策は現民主党政権からも評価された。

 菅は違う。実績と呼べるものが1つもないこともそうだが、菅は近年、まれにみるダメージを日本にもたらしている。...本文続く

──ここから先は7月13日発売の『ニューズウィーク日本版』 2011年7月20日号をご覧ください。
<デジタル版マガストアでのご購入はこちら
<デジタル版Fujisan.co.jpでのご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください

水曜発売Newsweek日本版のカバー特集は「日本政治メルトダウン」。震災復興も夏の電力対策もそっちのけ、身勝手な壊し屋になり下がったように見える菅首相と、それを取り巻く政治メディアや政治資金のあり方を追及します。
■日本 菅直人という名のストレステスト
■メディア 政治をダメにする「第4の権力」
■疑惑 「北朝鮮」と「献金」の深い闇

他にも
■暴かれたマードックの陰謀
■マフィアを愛した妻たちの絶望
■タイ「美女首相」の危うい勝利 など
<最新号の目次はこちら

[2011年7月20日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中