最新記事

日本社会

悲劇を増幅させた同質社会と官僚体質【後編】

The Good and Bad of Japan on Display

原発事故へのお役所対応を生んだ官僚システムと、従順すぎる世論にメスを入れるチャンスだ

2011年3月23日(水)15時51分
クライド・V・プレストウィッツ(米経済戦略研究所所長)

<前編はこちら

 ウォールストリート・ジャーナル紙は元東電社員で現在は内閣府原子力委員会の委員を務める尾本彰の話として、東電は地震の翌日に海水注入で原子炉を冷やすことを考えたが、海水を使うと原子炉が永久に使えなくなり資産価値が損なわれるため躊躇したと報じている。結局、原子炉建屋が最初の爆発を起こし菅直人首相から命じられるまで、海水注入は行われなかった。

 ある政府関係者は言う。「この事故は60%は人災だ。東電は初動対応に失敗した。10円玉を拾おうとして100円玉を落としたようなものだ」

 福島第一原発からわずか80キロの場所にいた自衛隊も、地震後5日目まで事故対策に本格的に参加しなかった。東電側から要請がなかったからだという。実際ある時点では、いったいどういうつもりかと菅が東電に詰め寄る場面もあったという。

 日本政府、とりわけ強力な省庁やその規制化にある「半官半民」企業の価値観ややり口、縄張り意識や態度に西側の日本通は慣れっこで、今さらこの程度の報道には驚かない。

 外圧もおなじみだ。日本政府はしばしば、アメリカ政府など外国からの圧力がなければ政策や手続きを変えられない。80年代、私が日米貿易交渉に参加したとき、日本政府関係者がよく私のところにきて、政治家や官僚の反対が強いから外圧をかけて欲しいと頼んでいったものだ。

英雄的国民の顔の裏にあるもの

 今回、日本政府と東京電力が原発事故の実態がそれまでの発表より深刻だと認めたのも、アメリカと核管理機関の専門家が疑義を唱えたからだ。

 つまり日本には、英雄的な国民と、内紛や失策続きの政治家・官僚という両方の顔がある。

 その日本が今直面する大きな課題は、この危機をテコにして、日本の政治と官僚機構に革命的な変化をもたらし、政府と規制産業の透明性を最大限に担保する強力な監視機関を作れるかどうかだ。

 そしてもう一つの問題は、同質的な日本社会の構成をどう変えていくかだ。日本は同質性を維持することで社会の調和を守ることを強調し、実質的に移民の受け入れを拒否してきた。だが、高齢化と人口減少に直面する今、移民の受け入れなしには日本は長期的に絶滅の道を歩むことになるだろう。

 だとすれば次の課題は、日本社会の調和と移民をどう両立させるかだ。日本の未来は、これらの問いに対する答えにかかっている。

Reprinted with permission from The Clyde Prestowitz blog, 22/03/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

ニュース速報

ビジネス

18年の独経済成長率、2.2%に加速見通し=商工会

ビジネス

中国人民銀総裁、資産価格急落リスクを警戒 過度の楽

ビジネス

情報BOX:次のFRB議長は誰か、候補5人の強みと

ワールド

NZファースト党が労働党の新政権を支援、アーダーン

MAGAZINE

特集:中国予測はなぜ間違うのか

2017-10・24号(10/17発売)

何度も崩壊を予想されながら、終わらない共産党支配──。中国の未来を正しく読み解くために知っておくべきこと

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    iPhoneX(テン)購入を戸惑わせる4つの欠点

  • 2

    トランプ、金正恩の斬首部隊を韓国へ 北朝鮮に加え中国にも圧力か?

  • 3

    NYの電車内で iPhoneの「AirDrop」を使った迷惑行為が危ない流行?

  • 4

    北朝鮮をかばい続けてきた中国が今、態度を急変させ…

  • 5

    iPhone8はなぜ売れないのか

  • 6

    石平「中国『崩壊』とは言ってない。予言したことも…

  • 7

    ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由

  • 8

    iPhone新作発表に韓国メディアが呼ばれなかった理由

  • 9

    北朝鮮危機、ニクソン訪中に匹敵する米中合意の可能性

  • 10

    iPhoneはなぜ割れるのか?<iPhone 10周年>

  • 1

    iPhoneX(テン)購入を戸惑わせる4つの欠点

  • 2

    イージス艦事故の黒幕は北朝鮮か? 最強の軍艦の思わぬ弱点

  • 3

    ポルノ王がトランプの首に11億円の懸賞金!

  • 4

    北朝鮮との裏取引を許さないアメリカの(意外な)制…

  • 5

    トランプ、金正恩の斬首部隊を韓国へ 北朝鮮に加え…

  • 6

    NYの電車内で iPhoneの「AirDrop」を使った迷惑行為…

  • 7

    石平「中国『崩壊』とは言ってない。予言したことも…

  • 8

    北朝鮮をかばい続けてきた中国が今、態度を急変させ…

  • 9

    通勤時間というムダをなくせば、ニッポンの生産性は…

  • 10

    北朝鮮の金正恩が愛する実妹ヨジョン 党中枢部入り…

  • 1

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 2

    「北朝鮮はテロリストだ」 北で拘束された息子は異様な姿で帰国し死んだ

  • 3

    北朝鮮はなぜ日本を狙い始めたのか

  • 4

    「金正恩の戦略は失敗した」増大する北朝鮮国民の危…

  • 5

    トランプの挑発が、戦いたくない金正恩を先制攻撃に…

  • 6

    米軍は北朝鮮を攻撃できない

  • 7

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 8

    中国が北朝鮮を攻撃する可能性が再び----米中の「北…

  • 9

    米朝戦争が起きたら犠牲者は何人になるのか

  • 10

    iPhoneX(テン)購入を戸惑わせる4つの欠点

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

全く新しい政治塾開講。あなたも、政治しちゃおう。
日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 特別編集

最新版 アルツハイマー入門

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年10月
  • 2017年9月
  • 2017年8月
  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月