最新記事

健康

寝ないと太るって本当?

The Surprising Toll of Sleep Deprivation

「あまり寝なくても平気」という油断は禁物。睡眠不足は自覚症状なしに私たちの体をむしばむ

2010年7月29日(木)15時18分
ローレンス・J・エプスタイン

 私たちは1日にどれくらい眠れば十分なのか。眠気を感じなければ、睡眠は足りているのか。睡眠時間が少なくても不調を感じなければ、健康上は問題ないのか。

 こうした問いに対して、最新の研究結果がいくつかの興味深い答えを出している。

 平均的な大人が十分に休息を取り、最良の状態で機能するために必要な睡眠時間は、1日に7〜9時間。しかし、アメリカ人の睡眠時間は昔より減っている。

 05年に全米睡眠財団が行った調査によれば、アメリカ人の平均睡眠時間は1日6.9時間。これは、19世紀に比べて約2時間、50年前と比べて1時間少ない。10年ほど前の01年と比べても、約15〜25分も減っている。

 睡眠不足がいかに大きな弊害をもたらすか、私たちはあまり敏感に感じ取れないらしい。ペンシルベニア大学の研究チームの実験では、2週間にわたって被験者の睡眠を1日6時間未満に制限した。ところが被験者たちは、以前に比べてそれほど強い眠気を感じることはなく、自分が比較的正常に活動できていると思っていた。

肥満確率は2.5倍以上

 これはあくまでも自己判断でしかない。きちんとしたテストの結果を見ると、2週間の調査期間中、被験者の認知能力と反応速度はどんどん落ちていった。調査期間の最後には、48時間起き続けている人と同程度までテストの成績が低下した。

 弊害はこれだけにとどまらないようだ。シカゴ大学の研究チームによると、睡眠が不足すると、ある種のホルモンの分泌状況が変調を来す。その結果、食欲が高まり、食後の満腹感を感じづらくなり、糖分の摂取に対する体の反応が変わる。要するに、肥満と糖尿病のリスクが高まるのだ。この後に行われた数々の疫学的研究でも、同様の結果が得られている。

 ケース・ウェスタン・リザーブ大学とハーバード大学医学大学院の研究チームが最近報告しているように、このテーマに関する長期にわたる大規模な研究はことごとく、睡眠不足と将来の肥満との間に関連性を認めている。

 なかでも見逃せないのが子供の睡眠不足と肥満の関係だ。ケース・ウェスタン・リザーブ大学とハーバード大学医学大学院の報告によれば、子供を対象にした31件の研究でも、大人の場合と同様の結論が見いだされている。高校在籍年齢の子供を対象にしたケース・ウェスタン・リザーブ大学医学大学院のスーザン・レッドラインらの研究はその一例だ。

 レッドラインらの研究によると、睡眠時間が短い子供ほど、肥満になる確率が高い。1日に8時間以上寝ている子供に比べると、睡眠時間が6〜7時間の子供は肥満になる確率が2.5倍以上に達した。睡眠時間が短いほど肥満のリスクが高まる傾向がはっきり見て取れたのだ。

眠ればホルモン値は戻る

 肥満になる可能性が増すだけではない。高血圧や心臓病のリスクの増加と睡眠不足を関連付ける研究結果も多数発表されている。

 もっとも、悪い話ばかりではない。これらの弊害が表れても、適切な量の睡眠を取れば問題を解消できる。先に紹介したシカゴ大学の研究によると、被験者に2日続けて10時間の睡眠を取らせると、ホルモンの値が正常値に戻り、空腹感と食欲の強さを示す数値が25%近く低下したという。

 睡眠を減らしたくなる理由はいくらでもある。照明器具、コンピューターなどの電子機器、さまざまな娯楽など、私たちは24時間、無数の誘惑に囲まれている。

ニュース速報

ワールド

香港の行政長官選、前財政官が出馬を正式表明

ビジネス

英財務相、競争力維持へ「他の方法も」 貿易協定巡り

ビジネス

東芝、メインバンクとして可能な限りサポート=三井住

ビジネス

インタビュー:GPIF、今年はPE・インフラ投資拡

MAGAZINE

特集:トランプ・ワールドの希望なき幕開け

2017-1・24号(1/17発売)

ドナルド・トランプがついに米大統領就任へ──。「異次元の政治家」にできること、できないこと

人気ランキング

  • 1

    日本はワースト4位、「経済民主主義指数」が示す格差への処方箋

  • 2

    スーパー耐性菌の脅威:米国で使える抗生物質がすべて効かない細菌で70代女性が死亡

  • 3

    北朝鮮外交官は月給8万円、「誰も声をかけてこない」悲哀

  • 4

    【ダボス会議】中国が自由経済圏の救世主という不条理

  • 5

    オバマ、記者団に別れ「まだ世界の終わりではない」

  • 6

    トランプごときの指示は受けない──EU首脳が誇り高く…

  • 7

    トランプ大統領就任式ボイコット続出、仕掛け人のジ…

  • 8

    太陽光発電の発電コストが石炭火力発電以下に。ソー…

  • 9

    「知能が遺伝する」という事実に、私たちはどう向き…

  • 10

    ベーシックインカム、フィンランドが試験導入。国家…

  • 1

    オバマ米大統領の退任演説は「異例」だった

  • 2

    トランプ当選初会見でメディアを批判 ツイッターなどSNS大炎上

  • 3

    韓国ユン外交部長官「釜山の少女像は望ましくない」

  • 4

    「南シナ海の人工島封鎖なら、米国は戦争覚悟すべき…

  • 5

    オバマ、バイデン副大統領に最後のサプライズで勲章…

  • 6

    南シナ海の人工島封鎖で米中衝突が現実に?

  • 7

    ダライ・ラマ制裁に苦しむ、モンゴルが切るインドカ…

  • 8

    北朝鮮が国家ぐるみで保険金詐欺、毎年数十億円を稼ぐ

  • 9

    トランプ今度は製薬会社を標的に 薬価引き下げを表明

  • 10

    トランプ大統領就任式ボイコット続出、仕掛け人のジ…

  • 1

    オバマ米大統領の退任演説は「異例」だった

  • 2

    キャリー・フィッシャー死去、でも「2017年にまた会える」

  • 3

    「知能が遺伝する」という事実に、私たちはどう向き合うべきか?

  • 4

    トルコのロシア大使が射殺される。犯人は「アレッポ…

  • 5

    トランプ当選初会見でメディアを批判 ツイッターな…

  • 6

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 7

    日本の制裁措置に韓国反発 企画財政省「スワップ協…

  • 8

    韓国ユン外交部長官「釜山の少女像は望ましくない」

  • 9

    安倍首相の真珠湾訪問を中国が非難――「南京が先だろ…

  • 10

    独身男性の「結婚相手は普通の子がいい」は大きな間…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本の観光がこれで変わる?
リクルート
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 臨時増刊

世界がわかる国際情勢入門

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年1月
  • 2016年12月
  • 2016年11月
  • 2016年10月
  • 2016年9月
  • 2016年8月