最新記事

メディア

ネットに巣くう戦争ポルノの闇

Carnage.com

米軍の誤射でカメラマンが死ぬ映像が4月に公開されて衝撃を与えたが、この手の「衝撃映像」はいくらでも見られる。供給源は米軍そのものだ

2010年7月6日(火)15時08分
ジェシカ・ラミレス
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

印刷

フェティシズムの一種 イラクの武装勢力メンバーが撃たれる瞬間を捉えた映像 youtube

 あまり鮮明な動画ではない。写っているのは3人のイラク人男性。米軍の攻撃ヘリに遠くから監視されていることに気付かないまま、そのうち2人は武器のようなものをいじっている。ヘリのパイロットに指令が下る。「奴らを撃て」

 30ミリ機関砲の音が響く。「(1人)仕留めた」。パイロットが言う。「もう1人も撃て」と、無線の声が言う。ダ、ダ、ダ、ダ、ダ。2人目の男が倒れる。

 3人目が隠れたトラックに砲弾が浴びせられ、はうようにして人影が現れる。「(もう一度)撃て」。無線の声がパイロットに命じる。砲撃が巻き起こした砂ぼこりが収まった後、地面には男の死体が転がっている──。

 イラクから約1万キロ離れたアメリカで、ネイト・Jはパソコン画面に映し出された映像に心を奪われた。06年のその日、彼は兵士や学者が言う「戦争ポルノ」の味を初めて知った。

 シールの印刷会社を経営するネイトは軍事マニア。だがイラク人3人が射殺されるこの動画は、テレビのミリタリー専門番組でも見たことがないものだった。「ワオ、という感じだった。こういう映像をもっと見たいと思った」

 願いはすぐかなった。今年4月、07年にイラクでロイター通信のカメラマンらが米軍に誤射されて死亡した瞬間の映像が公開され、多くの人に衝撃を与えた。実際には、この手の「戦争系衝撃映像」はYouTubeをはじめとする動画サイトでいくらでも見つかる。

 ネイト自身も今や、戦争や犯罪専門の動画共有サイト「ライブリーク・ドットコム」などに動画を800件以上アップロードしている(殺すという脅迫を受けているため名字は伏せてほしいと彼は希望した)。

 米軍が戦闘の模様を収めた映像をインターネット上で公開し始めたのは、アフガニスタンとイラクでの戦争がきっかけだった。前線と「銃後」の絆を強化することが目的だった。戦場の兵士も手持ちのカメラで動画を撮影し、無人偵察機が捉えた映像を個人的に入手するようになった。

 こうした動画を手にした民間人と兵士は同じことをやりだした。映像を編集してBGMを付け、ネット上で流通させ始めたのだ。

 現在、公開されている戦争ポルノ動画は数千件、視聴回数は膨大な数に上る。長い戦争の出口は見えてきたが、戦争ポルノを楽しむ人は増える一方。テレビゲームと同じく、この手の動画はハイテク戦争の最も残酷な側面を歪曲し、フェティシズムの対象に変える。

始まりはアブグレイブ

 戦争を捉えたイメージはこれまで、ロバート・キャパなど一部のプロの写真家によって撮影され、広められてきた。だが即時性の高いインターネットと安価な動画テクノロジーの普及で、今では誰もが目の前の情景を自分の視点で記録できるようになった。

「新しい傾向が生まれた」と、米ブラウン大学ワトソン国際問題研究所のジェームズ・ダーデリアン教授は言う。「写真と違って動画は内容をより正確に描写しているとの印象を与える。実際に正確であるかどうかにかかわらず、だ」

 研究者によれば、戦争ポルノの始まりはイラクのアブグレイブ刑務所で撮影された一連の捕虜虐待写真にさかのぼる。米軍女性兵士が裸のイラク人男性を犬のように従えた画像はイラク戦争を象徴するイメージになった。

 この事件の後、氾濫が始まった。米軍兵士の中には、戦争ポルノを通常のポルノを手に入れる「貨幣」として使う者も現れた。

最新ニュース

ビジネス

3月米新築1戸建て住宅販売、8カ月ぶり低水準

2014.04.24

ビジネス

4月米製造業PMIが小幅低下、生産は3年ぶり高水準

2014.04.24

ビジネス

スウェーデン財務相、日本のようなデフレに陥る可能性を否定

2014.04.24

ビジネス

米国株式市場・序盤=下落、企業決算好調も買い意欲弱く

2014.04.24

新着

超大国

アメリカなき世界に迫る混沌の時代【後編】

「世界の警察官」が不在になればアジアや中東各地で覇権争いが激化し国際社会は大混乱に陥りかねない [2013.12.31号掲載]

2014.04.23
超大国

アメリカなき世界に迫る混沌の時代【前編】

「世界の警察官」が不在になればアジアや中東各地で覇権争いが激化し国際社会は大混乱に陥りかねない [2013.12.31号掲載]

2014.04.22
中国軍事

中国は超大国と張り合わず

軍事大国を目指すより米軍の介入を防いで「核心的利益」を守る──それが中国の思惑だ [2014.3.25号掲載]

2014.04.21
ページトップへ

本誌紹介 最新号

2014.4.29号(4/22発売)

特集:ロボットと人間の未来

2014.4.29号(4/22発売)

家庭、職場、災害対応加速するロボット開発
ヒューマノイド時代の到来で人間の暮らしはこう変わる

テクノロジー ロボット革命が切り開く人類の未来

■歴史 ロボット開発の4世紀の軌跡

課題 避けて通れないリスクと責任

Q&A 「ターミネーター」を禁止せよ

軍事 兵士とマシンの奇妙な愛情

日米 鉄腕アトムをあきらめないで

■比較 こんなに違った日米のロボット観

雑誌を購入   デジタル雑誌を購入
最新号の目次を見る
本誌紹介一覧へ

Recommended

Photo

ロンドンの 殺人の記憶を 風化させない

2014.04.18 : ロンドンの街を歩いていると、ひっそりと喪に服している一角を目に…

Picture Power
詳しく見る

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム&ブログ
  • 最新ニュース
  1. 1

    場違いな「歴史論争」で中国にイエローカード

    ナチスの戦争犯罪を引き合いに対日批判ドイツとヨーロ…

  2. 2

    インドと日本を結ぶ意外な友情

    次期首相と目されるモディと安倍の長年の関係と中国へ…

  3. 3

    オーストラリア人の94%が反捕鯨の理由

    捕鯨問題はオーストラリア国民が党派の枠を超えて結束…

  4. 4

    米海軍の「海水燃料」がもたらす大変革

    海水から作る画期的な新エネルギー技術は将来、米軍艦…

  5. 5

    ウクライナ内戦への足音

    ウクライナ軍が、東部を占拠していた親ロシア派の強制…

  6. 6

    グーグルも無人機買収に参戦

    軍事ロボット買収に続く無人機買収。グーグルの狙いは…

  7. 7

    中国は超大国と張り合わず

    軍事大国を目指すより米軍の介入を防いで「核心的利益…

  8. 8

    どん底イタリアに奇跡を起こす男

    猛烈な仕事人間でツイッター中毒……イタリア再生とい…

  9. 9

    カンボジア労働者「集団失神」の謎

    衣料品工場で100人以上が倒れる集団ヒステリーが頻…

  10. 10

    ウクライナ危機で問われるNATOの意味

    アフガニスタン後の存在意義を見失いかけていたNAT…

  1. 1

    コピペがゼロで、100%オリジナルな学術論文は許されないという理由

    理研の「STAP細胞」研究をめぐる問題に関しては…

  2. 2

    悪性インフレで「貧困と格差の時代」がやってくる

    株価が下がり続け、アベノミクスの減速が目に見えて…

  3. 3

    ようやく発表された「北海道新幹線車両」、しかしまだまだ問題は山積

    2015年3月に開業予定の北陸新幹線金沢延伸は、…

  4. 4

    来日26年目で発見した日本人の大きな変化

    今週のコラムニスト:李小牧 〔4月8日号掲載〕…

  5. 5

    中国の夢、それぞれの日々

    「息子がスマホにVPNを入れてくれたんですよ...…

  6. 6

    アイルランドとイギリスは意外に友好的

    他人が見た夢の話を事細かに聞かされるほど退屈なこ…

  7. 7

    スマートな米IT企業の変身パターン

    日本にも進出したハイヤー・サービスのウーバーが、…

  8. 8

    シリコンバレーの意外な差別カルチャー

    外からはイノベーションと富を生み出す稀な土地と見…

  9. 9

    小保方氏の会見でみえた「科学コミュニケーション」のむずかしさ

    注目された小保方晴子氏のSTAP細胞についての記…

  10. 10

    都会に残るプチ神社に息づく伝統の美学

    今週のコラムニスト:マイケル・プロンコ 〔4月1…

  1. 1

    焦点:米国が悪化させた対ロ関係、プーチン氏の「過剰反応」要因に

    過去十数年にわたる米ロ関係や現在のウクライナ危機に…

  2. 2

    インタビュー:原発は国家ぐるみの粉飾決算=吉原・城南信金理事長

    脱原発路線を強力に主張する異色の地域金融機関トップ…

  3. 3

    与那国島に自衛隊レーダー基地、中国にらみ空と海の監視強化

    防衛省は19日、日本最西端の沖縄県与那国島で基地建…

  4. 4

    韓国沖の旅客船沈没、1人死亡=海洋警察

    韓国海洋警察によると、南西沖で起きた旅客船の沈没事…

  5. 5

    韓国船沈没、ダイバーが船内に3人の遺体発見=海洋警察

    韓国南西部沖で修学旅行中の高校生らが乗った旅客船「…

  6. 6

    韓国船沈没、事故当時は3等航海士が操船=捜査当局

    韓国南西部沖で修学旅行中の高校生らが乗った旅客船「…

  7. 7

    日米首脳会談では、TPP合意の発表はない見込み=米政府高官

    米政府高官は18日、来週行われる日米首脳会談では環…

  8. 8

    焦点:米大統領アジア歴訪に試練、問われる「中国抑止」の本気度

    フィリピンと中国が領有権をめぐって対立する南シナ海…

  9. 9

    韓国沖の旅客船沈没、約300人の安否不明=海洋警察

    韓国海洋警察などによると、同国南西沖で起きた旅客船…

  10. 10

    焦点:汚職高官追放に「聖域」なし、中国主席が腹心登用で権力固め

    中国の習近平国家主席は、汚職の疑いのある高官を追放…

MAGAZINE

特集:ロボットと人間の未来

2014-4・29号(4/22発売)

家庭、職場、災害対応加速するロボット開発
ヒューマノイド時代の到来で人間の暮らしはこう変わる

  • 最新号の目次
  • 予約購読お申し込み
  • デジタル版
Sound's View 自分を創る音の風景 中村七之助
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

STORIES ARCHIVE-World Affairs

  • 2014年4月
  • 2014年3月
  • 2014年2月
  • 2014年1月
  • 2013年12月
  • 2013年11月
  • 2013年10月
  • 2013年9月
  • 2013年8月
  • 2013年7月
  • 2013年6月
  • 2013年5月
  • 2013年4月
  • 2013年3月
  • 2013年2月
  • 2013年1月
  • 2012年12月
  • 2012年11月
  • 2012年10月
  • 2012年9月
  • 2012年8月
  • 2012年7月
  • 2012年6月
  • 2012年5月
  • 2012年4月
  • 2012年3月
  • 2012年2月
  • 2012年1月
  • 2011年12月
  • 2011年11月
  • 2011年10月
  • 2011年9月
  • 2011年8月
  • 2011年7月
  • 2011年6月
  • 2011年5月
  • 2011年4月
  • 2011年3月
  • 2011年2月
  • 2011年1月
  • 2010年12月
  • 2010年11月
  • 2010年10月
  • 2010年9月
  • 2010年8月
  • 2010年7月
  • 2010年6月
  • 2010年5月
  • 2010年4月
  • 2010年3月
  • 2010年2月
  • 2010年1月
  • 2009年12月
  • 2009年11月
  • 2009年10月
  • 2009年9月
  • 2009年8月
  • 2009年7月
  • 2009年6月
  • 2009年5月
  • 2009年4月