最新記事

空港検査

乗客を丸裸にする全身スキャナー

2010年1月7日(木)16時04分
小暮聡子(本誌記者)

まるでストリップ 隠した拳銃がなければ局部丸見え?のデモ映像 Joe Skipper-Reuters

 クリスマスに起きた米機爆破テロ未遂事件はなぜ防げなかったのか。金属探知機やX線手荷物検査など従来の検査装置の不備が露呈するなか、注目を集めているのが新型の全身スキャナーだ。

 乗客がブースに入ると衣服の下まで透視できるこの装置は、爆発物や麻薬、セラミック製の武器を検出でき、今回下着の中に隠して持ち込まれた高性能爆薬も発見できただろうとされている。アメリカでは07年に試験的に取り入れて以来、現在は19空港が導入。靴やベルトを脱ぐ手間が省け、数秒で検査が終わるという利点もある。

 一方で、検査で得られる3D画像は性器の形や豊胸手術の有無まで映し出すため、プライバシー侵害との批判もある。米議会下院は昨年、全身スキャナーを乗客検査の主要な手段として用いることを禁じ、乗客が従来型の検査を選ぶ権利を認める法案を可決した。

 今回の事件の容疑者が通過したオランダのスキポール空港には数年前からスキャナーが導入されていたが、プライバシー保護を理由にほとんど使用されていなかった。事件を受け、オランダ内務省は同空港でスキャナーの使用を開始すると発表した。米運輸保安局は09年に150台購入し、10年にはさらに300台購入して導入を拡大するという。義務化を求める声が強まりそうだ。


関連記事:GW、空港全身スキャンの心構え(2010年4月27日up)

[2010年1月13日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週

ビジネス

マスク氏報酬と登記移転巡る株主投票、容易でない─テ

ビジネス

ブラックロック、AI投資で各国と協議 民間誘致も=

ビジネス

独VW、仏ルノーとの廉価版EV共同開発協議から撤退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 2

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 3

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 4

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「香りを嗅ぐだけで血管が若返る」毎朝のコーヒーに…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中