最新記事

ヘルス

「孤独」は本当に心臓に悪い 疎外感の健康ダメージ=たばこ1日15本分

2018年6月18日(月)17時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

孤独はかつてないほど蔓延している(写真はイメージ) Tharakorn-iStock

<一人暮らしであるかよりも孤独かどうかが、早期死亡、メンタルヘルスの悪化に大きく影響する>

心臓は時に、心の状態に大きく影響を受ける。例えば、たこつぼ心筋症。失恋によって突然、激しい胸の痛みが引き起こされ、重い心筋障害の引き金となる場合がある。

最新の研究によると、孤独と早死には強い関連があるという。

アイルランドの首都ダブリンで開催された欧州心臓病学会で、コペンハーゲン大学病院のAnne Vinggaard Christensenとそのチームが、孤独と健康リスクの関連について発表を行った。 心疾患、心不全、不整脈を抱える1万3463人を対象とした研究で、身体および心の健康状態、ライフスタイル、喫煙習慣、そして交遊関係に関するアンケートから得たデータが使用されている。

なかでも交遊関係についての設問は、特に慎重にかつ綿密に作られた。孤独なことと1人でいることは同義ではないため、幅広く情報を集めることが重要だったからだ。アンケートは、1人暮らしか、孤独と感じたことがあるか、誰かと話をしたいと感じたことがあるかといった問いが中心になった。

「テレビが1番の友人」は390万人

「孤独はかつてないほど蔓延している。多くの人が1人で生活をしている」と、Christensenは言う。

デイリー・メールによると、アメリカの人口の4分の1は一人暮らし。孤独な45歳以上は約4260万人にのぼる。一方イギリスでは、390万人がテレビが1番の友人としている。

Christensenによると「早期死亡、メンタルヘルスの悪化、生活の質低下には、一人暮らしであるかよりも孤独かどうかが男女ともに大きく影響する」。これは心臓疾患の種類に関わらず当てはまるそうだ。患者の年齢、教育水準、そのほかの健康上の問題と既往歴、BMI(ボディマス指数)、喫煙、アルコール摂取量を考慮し、差し引いても結果は同じだった。孤独は女性の場合には死亡のリスクを2倍に、男性の場合にも同程度まで高めると結論づけられた。

さらに悪いことに男女問わず孤独は、生活の質を極端に低下させる悪影響もたらし、不安症と鬱病のリスクを3倍に高める。

【参考記事】離婚で「早死にリスク50%アップ」 夫や妻の小言もあるうちが花

Christensenは「社会的支援を享受できていない人は、医療からも遠ざかり不健康なライフスタイルを送りがちになる。自分に対しての十分なケアができず、結果として『孤独=悪』という仮説の大きな裏付けとなる」と説明する。「我々は孤独がいまだかつてないほど当たり前の時代に生きていて、医療従事者はこの事実を受け入れ正しくリスクを評価しなければならない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中