最新記事

エネルギー

「世界最大の産油国」米シェール革命はバブル

国産原油ブームの陰で忘れられていたシェールオイルの致命的な弱みとは

2014年8月1日(金)11時21分
ロジャー・ハワード

革命の原動力 地下深くから原油や天然ガスを掘削するフラッキング技術 David McNew/Getty Images

 アメリカは石油開発ブームの真っただ中にある。今月バンク・オブ・アメリカが発表した報告書によると、今年アメリカはサウジアラビアもロシアも抜いて世界最大の産油国になった。地下深いシェール(頁岩=けつがん)層にある原油や天然ガスを掘削する技術が、エネルギー生産に革命を起こしたのだ。

 だが革命が永遠に続くとは限らない。テキサス州のエネルギーアナリスト、アーサー・バーマンや、カナダの地球科学者デービッド・ヒューズは、これは既にバブルだと警告する。

 例えば国際エネルギー機関(IEA)の予測では、カナダを含む北米の産油量は19年にピークを打ち、他の国々が追い付いてくる30年代初頭には世界一の座を譲ることになるという。

 シェール革命は、エネルギー供給の予測がいかに難しいかを示す典型例だ。数年前までは、中東原油への依存がアメリカの大きな政治課題だった。ブッシュ前大統領は06年、「アメリカの石油中毒」は「世界の不安定な地域」への依存を意味すると危機感を募らせていた。当時誰が、シェール革命でアメリカが世界最大の産油国になるなどと予想しただろう。

 シェール産業の将来も同様に予測は難しい。地下に膨大なシェールガスとシェールオイルが埋蔵されていることは間違いない。だがその量を知るのは困難だ。例えば米エネルギー省は最近、カリフォルニア州モンテレーのシェールオイルの推定可採埋蔵量を140億バレルから6億バレルへ大幅に下方修正した。

原油安なら赤字に転落

 埋蔵量より重要なのは採算性だ。初期投資の回収にどのくらい時間がかかるのか、リスクに見合う利益は出るのか。シェール革命が本格化した08年頃、アメリカの産油量は1946年以降で最低の水準にあった。シェールオイルを比較的安く採掘できる技術が確立される一方、原油価格が高騰して利益が期待できるようになったのもこの頃だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中