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「世界最大の産油国」米シェール革命はバブル

2014年8月1日(金)11時21分
ロジャー・ハワード

 すべては価格次第だ。シェール層の岩盤を破砕して原油やガスを取り出す「フラッキング(水圧破砕法)」という掘削技術はコストが高いので、採掘した原油・ガスが高く売れなければ利益は出ない。今の国際価格は1バレル=100ドル超だからいいが、90ドルを下回れば採算割れになるかもしれない。

 原油価格下落の要因はいくらもある。アメリカとイランの関係が改善してイランの原油輸出が解禁になるとか、イラク情勢が安定するとか、あるいは中国の景気が悪くなれば世界的な原油需要も減るだろう。

 価格が上がり続けたとしても、この数年維持してきた規模の生産量を続けるのは容易ではない。シェール油田の寿命は7〜8年。次々と新たな鉱脈を探す必要があり、しかも後になるほどより採掘困難な場所が残される。

 在来型の油田は数十年の寿命がある。20世紀半ばに操業を開始したサウジアラビアのガワール油田は、今も日量500万バレルを産出し続けている。
アメリカはシェールの落日に備えるべきだと、バーマンやヒューズは言う。数十万の雇用が失われ、アメリカは再び中東原油と原油価格の乱高下に翻弄されることになるかもしれない。

 被害を小さくする1つの方法は、燃費効率を高めること。そして太陽光発電や燃料電池などの再生可能エネルギーの開発に本腰を入れることだ。

 シェール革命はかつて万能薬と歓迎されたが、実際は代替燃料の開発を後回しにする口実になったのではないか。この革命はあくまで応急処置にすぎない。時間を稼げる間に持続可能なエネルギーの開発を急ぐべきだ。

[2014年7月29日号掲載]

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