最新記事

医学

「取れない疲れ」の原因を探れ

2010年12月16日(木)13時34分
クロディア・カルブ(医療担当)

 患者は科学的確証を求めている。昨年発表された研究では、ネバダ州にあるウィットモア・ピーターソン研究所(WPI)のジュディ・ミコビッツらが、XMRVという感染性レトロウイルス(HIVと同系統)がCFS患者の67%で血液中に存在することを突き止めた。

「私たちが調べた患者については間違いない」と、ミコビッツは言う。NIHの研究では、患者の87%でXMRVと同系統のウイルスのDNAが見つかったのに対し、健康な人では7%にすぎなかった。

 しかしCDCの報告書やヨーロッパの複数の研究などでは、ウイルスは発見されなかった。理由ははっきりしない。ウイルスの検査法は研究室によって異なる。ある地域に固有のウイルスという可能性も考えられる。

 おそらく最も重要なのは、WPIやNIHの研究対象となった患者も含めて、ほかの患者よりはるかに症状の重い患者もいることだ。「結局、このウイルスについてはまだ謎が多いということだ」と、CDCのスティーブ・モンローは言う。
 
 そもそもXMRVにどうやって感染するかということさえ分かっていない。見つかったウイルスが実際にCFSを引き起こすかどうかもまだ分からないと、研究者は強調する。「ウイルスは病気とはまったく関係なく、CFSの原因ではないかもしれない」と、NIHのハービー・オルターは言う。

 しかしウイルスが原因である可能性は、人々を不安にさせている。ある国際的な血液バンク協会は今年、ウイルス感染を懸念してCFS患者は献血を控えるよう勧告した。アメリカ赤十字に至っては、CFS患者やXMRV感染が判明した人の献血を無期限に延期している。

臨床試験にも賛否両論

 医師は現在、運動、認知行動療法、鎮痛剤、睡眠薬などさまざまな対症療法を指示している。しかしウイルスが原因だとしたら、ある問題が浮上する。HIV感染者に処方するような抗レトロウイルス剤をCFS患者にも処方すべきかどうか、だ。

 CFS用としては未承認の抗レトロウイルス剤を服用している患者もいるが、そろそろ計画的な臨床試験を行って有効性を確認するべきだと、アルバータ大学(カナダ)のアンドルー・メイソン准教授は言う。「戦いに勝つ方法はそれ以外にない」

 とはいえ、ここでも異論はある。臨床試験に入るにはより確実な根拠が必要だと主張する専門家もいる。「患者は明らかに病気で苦しんでおり、早急に治療する必要がある。しかし本当に関連性があるかどうかを突き止めるのが先決だ」と、コロンビア大学感染免疫研究所のイアン・リプキン所長は言う。

 11月上旬、リプキンは研究を次の段階に進めようとしていた。全米の同じような症状の患者少なくとも150人から血液サンプルを集め、年齢、性別、居住地域が同じ健康な人のグループと比較して、ウイルスとの関連性を極力はっきりさせるという。

 科学的発見は私たちが望むほど簡単ではない。たいてい直感と研究と異論とフライングと脱線と落胆が絡み合っている。

 いつの日かベールがすっかり取り払われ、原因が解明されて治療法が見つかる。そしてヒレンブランドをはじめ何百万人もの患者が、生き生きとした日々を取り戻せる......。誰もがそう願っている。

[2010年12月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米軍、西半球国防当局者会議を2月11日に主催

ワールド

EU、平和評議会のトランプ氏への権限集中に「深刻な

ワールド

トランプ氏移民政策、相次ぐ市民射殺で選挙戦の争点に

ワールド

トランプ氏、英兵士を「勇敢」と称賛 アフガン発言へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 6
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 7
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 8
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 9
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 10
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中