最新記事

性教育

「幼稚園児にコンドーム」は愚策か

マサチューセッツ州の小学校コンドーム提供計画が批判されているが、看護師のカウンセリングつきで配れば無謀なセックスを避ける効果も期待できる

2010年7月5日(月)17時25分
ケート・デイリー

批判の的 コンドームが子供を性行為に走らせるわけではない Tim Wimborne-Reuters

「幼稚園児にコンドームを」----新聞の見出しとしては確かに目を引く言葉だが、マサチューセッツ州プロビンスタウンの教育委員会が打ち出した計画の本質を言い表しているとは言いがたい。

 このコンドーム提供計画は、子供の性行為感染症(STD)への感染と望まない妊娠を防ぐのが狙いだが、批判が殺到している。教育委員会は、意図的にコンドームの提供対象に制限を設けていない。性的行動をしようと思う子供は誰でも、学校の看護師に言えばコンドームをもらえる(親には連絡されない)。その際に看護師は、安易なセックスを自制するよう諭すなどのカウンセリングを行うものとされている。

 実際の可能性はともかく、理屈の上では、6歳の子供が学校の保健室を訪ねてコンドームを受け取ることもありうる。「コンドームが何のためのものなのかも知らず、『SEX』という単語もつづれない1年生にコンドームを配るなんて、あまりにばかげている」と、マサチューセッツ家族研究所のクリス・ミノー所長は地元紙に語っている。

セックス経験率が低下した例も

 この批判は的外れだ。「SEX」のつづりを知らない1年生は、コンドームなど欲しがらない。それに、学校の保健室にコンドームを常備したところで、こういう幼い子供がいきなりセックスのことを考え始めるわけでもない。

 数々の研究が明らかにしているように、子供たちにコンドームを提供しても、性行為を行う確率が高まることはない。子供たちが行う性行為の安全性が高まるだけだ。

 むしろ、無償でコンドームを提供している学校では、子供たちが性行為を行う確率が低いという研究結果も一部にある。フィラデルフィアの複数の学校を対象にした調査によると、コンドームの提供を始めた学校では、性行為経験者の割合が64%から58%に減ったという。

 コンドームが子供を性行為に走らせるわけではないのだ。セックスをしたい子供は、コンドームがあってもなくてもセックスをする。

 性衝動に駆られてというより、ボーイフレンドやガールフレンドに強く迫られてセックスに同意したり、自分がもう子供ではないと実証するためにセックスをしたりする子供もいる。こういう子供たちが看護師のカウンセリングを受ければ、他人の時間割に従ってセックスをする必要などないのだと分かって、思いとどまるかもしれない。

 では、コンドーム提供とカウンセリングの対象を中学生以上に限定してもいいのではないか。いや、10歳や12歳の子供がセックスと接点のない生活を送っていると思い込むのはおめでたすぎる。

 ある中学校で行われた聞き取り調査によると、回答者の40%以上は2歳以上年齢が上の相手と交際していて、そういう生徒は性行為の経験率が平均の30倍に上っている。このような子供にこそ、大人のカウンセリングが必要だ。

親に期待するのは非現実的

 その「大人」が親であるべきだというのは立派な主張だが、現実的でない。セックスについて子供が親に相談する環境をつくるためには、日頃から親子の間にオープンで打ち解けた関係を築いておく必要がある。しかし米疾病対策センター(CDC)の調べによれば、安全なセックスについて親と話した経験がある若者は、18〜19歳の女性の48.5%、男性の35%にとどまる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米軍がホルムズ海峡封鎖へ、イランは交渉に戻る見通し

ワールド

ロシア・ウクライナ復活祭停戦、発効数時間で双方が違

ワールド

米イラン協議決裂、核・ホルムズ海峡で溝埋まらず 停

ワールド

中国、台湾向け観光規制緩和など新措置 野党党首訪中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 2
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 3
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけない副作用に研究者が警鐘
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 6
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中