最新記事
宇宙

夢の宇宙旅行で「勃起不全(ED)」のリスク...地球帰還後も続く?

A NEW SPACE RISK FOR MEN

2024年9月18日(水)15時20分
ロビン・ホワイト(自然・環境担当)
重力がない状態では、血液は簡単には体の下のほうへは流れない IGNATIEV/ISTOCK (ASTRONAUT), IM_PHOTO/SHUTTERSTOCK

重力がない状態では、血液は簡単には体の下のほうへは流れない IGNATIEV/ISTOCK (ASTRONAUT), IM_PHOTO/SHUTTERSTOCK

<太陽系の外から飛んでくる宇宙線のせいで、宇宙空間ではセックスの快楽を奪われるかも>

お金の問題さえクリアできれば宇宙を旅したいと考えている男性諸君に警告だ。2023年11月に米実験生物学会連合(The Federation of American Societies for Experimental Biology)の機関誌FASEBジャーナルに掲載された論文によると、宇宙空間に滞在すると勃起障害(ED)のリスクが高まるらしい。

その原因は、太陽系の外から飛んでくる強力な銀河宇宙線(GCR)と無重力状態にある。しかも症状は宇宙滞在中だけでなく、地上に戻ってからも長く続くという。


GCR被曝も無重力も宇宙空間では避け難い事象だが、ラットを用いた実験ではED発症との相関が確認された。どちらも体内の血流に悪影響を及ぼすからだ。ちなみにEDは性行為に必要な勃起状態を十分に維持できない状態を指す。原因はさまざまで、一般にはストレスや飲酒、疲労などが挙げられる。

「GCRが勃起機能を損なうというのは、必ずしも意外な結果ではない」と言うのは、論文の共著者でフロリダ州立大学助教のジャスティン・D・ラフェーバー。「正常な勃起に必要な血管内皮と神経系の機能をGCRが損なうことは以前から知られていた。そもそも勃起に関与する血管組織は、大動脈などに比べれば強くない。だから(GCRなどの)影響を受けやすい。だが意外だったのは、その影響が地上に戻ってからも長く残るという点だ」

GCRは、その被曝量が少なくても血管組織に影響を及ぼす。一方で無重力状態も、GCRほどではないが、いわゆる酸化ストレス(体内の活性酸素と抗酸化物質のバランスの乱れ)を通じて一定の影響を及ぼす。

今後は有人の宇宙飛行が増えるので、地球に帰還した後の宇宙飛行士の性的健康管理にも十分な配慮が必要だとラフェーバーは指摘する。

抗酸化剤の治療が有効

「今の宇宙船ではGCRを有効に遮蔽できず、深宇宙への旅では無力に等しい」と、ラフェーバーは本誌に語った。

「治療により被曝の影響を緩和することは可能だが、その効果を確認するには、動物実験でもさらなる研究が必要だろう。私たちの研究では、長い回復期後の状態を調べただけだ。被曝直後のほうが影響は明確に出るものと推測されるが、その点については今後の調査を待つしかない」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、緩和的金融政策を維持へ 経済リスクに対

ワールド

パキスタン首都で自爆攻撃、12人死亡 北西部の軍学

ビジネス

独ZEW景気期待指数、11月は予想外に低下 現況は

ビジネス

グリーン英中銀委員、賃金減速を歓迎 来年の賃金交渉
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入…
  • 7
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 8
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中