AIはもうここまで生活と仕事を変えた...いずれ奪われるこれほど多くの職種

LIFE-CHANGING AI

2023年6月15日(木)13時30分
デービッド・H・フリードマン(科学ジャーナリスト)

法律関連業務も、いずれ特定のタスクを処理するAI頼みになるかもしれない。投資銀行大手ゴールドマン・サックスが3月に発表したレポートによると、AIは今後数年で法律業務の45%近くを担えるようになるという。理由は、法律事務所の弁護士やスタッフが現在行っている仕事の多くは、膨大な量の書類に目を通して特定の情報を探し出し、その結果を要約したり標準的な契約書を作成したりするものだからだ。

「AIはこうしたルーティンワークを弁護士より素早くこなせる」と、カリフォルニア大学バークレー校の法律・テクノロジーセンターで共同ディレクターを務めるブランディ・ノーネキは言う。ただし、「ある案件に関連があるものとないものを識別したり、法的戦略を指揮するといった高度な法務活動を扱うことはまだできない」という。

既にAIを使ってクライアントに助言している法律事務所もある。カリフォルニアのオンライン法律サービス会社ドゥノットペイは、駐車違反などの軽微な法律違反に問われた被告が弁護士抜きで対処できるように、AIによる支援を提供中だ。

同社はAIの出力結果をリアルタイムで人間の弁護士に送り、法廷で読み上げさせるサービスも計画していた。だが今年1月、関与した弁護士の資格を剝奪すると州弁護士会に警告され、計画を撤回した。

企業ではもうすぐ、数百万人のオフィスワーカーがAIと一緒に働くようになりそうだ。例えば人事部門はAIを使って数万件のオンライン履歴書を数秒で選別し、求人要件に合致したスキルや経験を持つ候補者を絞り込む。人事担当者250人を対象にした調査では、92%がAI導入をさらに進める意向だ。フォレスターによれば、AIは人事関連業務を週平均11時間削減するという。

ほとんどの管理系業務の担当者は、間もなくマーケティング、財務、顧客サービスなどに特化したAIと(少なくとも比喩的に)オフィススペースを共有する日が来るだろう。企業は現在でも、広告の配置を瞬時に決めたりコストや売上高の変動を予測したり、品質管理上の問題を発見するためにAIを使っている。

一部の企業では、AIが人間を介さず顧客サービス上の問題解決に当たっている。オンライン中古車サイトのカーマックスでは、カスタマーレビューの分析と要約にAIが活躍していると、ニューヨーク大学のシーマンズは指摘する。「車の購入時期に関する顧客の意向を探る能力は(人間より)ずっと高い」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中