最新記事
SDGsパートナー

古民家がレストラン・サウナに! 動き出した「沿線まるごとホテル」の里をつづる中核施設「Satologue」とは?

2025年1月10日(金)21時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
Satologue

多摩川と青梅線の間の限界集落を一つのホテルにする「沿線まるごとホテル」プロジェクト。その中核施設としてオープンした「Satologue」のロゴイメージ

<無人駅がフロントで、空き家が客室...沿線地域全体を「1つのホテル」に。眠っていた地域資源を新たな価値に転換するプロジェクトがJR青梅線沿線で始動>

世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇


過疎高齢化による利用者の減少によって、事業運営が困難になっているローカル路線が日本全国で広がっている。今も存廃に揺れる路線が多いなか、鉄道インフラ維持のためにユニークな取り組みを展開しているのが、沿線まるごと株式会社だ。地域の課題をむしろ付加価値に転換するべく、2024年にはプロジェクトの中核施設「Satologue(さとローグ)」を開業。土地本来の良さを活かした循環型地域づくりの展望とは──。

「新たに何かを作るのではなく...」地域資源を活かした新しい旅行体験

過疎・高齢化が加速する地方部では、鉄道が廃線になることも珍しくなくなった。存廃について議論されている路線も多い。都内でもJR青梅線、特に青梅駅から奥多摩駅までの区間で乗車人数の減少が目立つ。昭和30年のピーク時には1万5000人以上いた奥多摩町の人口は現在、約3分の1にまで減っている。

そんななか、過疎地域によく見られる無人駅や空き家などを活用した新しいツーリズム体験を提供しているのが、沿線まるごと株式会社だ。

青梅線沿線地域を一つのホテルに見立て、訪れた人が地域をまるごと楽しめるよう、これまでは期間限定のツーリズムをスポット提供してきた。2024年5月には中核施設として、里をつづるレストラン・サウナ「Satologue」を開業するに至った。

newsweekjp20250109034739-6874ff64c667b5df53e8374467f8939f928465f3.jpg

Satologueのレストラン「時帰路(TOKIRO)」の内観

2020年11月に始動した「沿線まるごとホテル」プロジェクトについて、同社取締役の会田均氏は次のように語る。

「点在する地域資源を線路で線にしてつなげ、沿線地域をまるごと1つのホテルに見立てたプロジェクトです。新たに何かを作るのではなく、面(地域全体)としてリブランディングしていくことで東京から新たな地方創生モデルを発信し、交通等のインフラ維持を図りながら持続可能な地域をつくろうと取り組んでいます」

このプロジェクトは元々、JR東日本八王子支社と株式会社さとゆめが連携する形で動き出したものだが、本格的な事業展開にあたって翌21年12月に沿線まるごと株式会社が設立された。

ensenmarugoto_1.jpg

「沿線まるごとホテル」プロジェクトの概念図

プロジェクトの基本構造は、無人駅の駅舎等をホテルのフロントやロビーに見立て、改修した空き家をホテルの客室として利用してもらうというもの。新たな設備投資は最小限に抑えられ、空き家の有効利用にもなる。

実際、Satologueは築130年の空き家となっていた古民家を改修し、かつて林業で栄えた東京奥多摩の森や水、生態系、食、文化などを表現した施設となっている。無人駅を訪れたり、古民家に滞在したりすることは、旅行者にとっても有名観光地では味わえない新鮮な体験を得られるという意味で魅力的だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB利下げ「良い第一歩」、幅広い合意= ハセット

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 10
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中