最新記事
メンタル

幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ

2025年7月24日(木)18時31分
有田秀穂(医師・脳生理学者、東邦大学医学部名誉教授)*PRESIDENT Onlineからの転載
幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ

e.va -shutterstock-

<うつ、不安、モヤモヤ感...現代人の多くが抱える不調の背後に、セロトニン不足が潜んでいるかもしれない。脳科学の第一人者、有田秀穂氏が心と体のバランスを整えるカギを説く>

心身ともに健康でいるために何が必要か。東邦大学医学部名誉教授の有田秀穂さんは「セロトニンには、うつ病や強迫性障害をはじめ心身の不調に悩む人を再び元気にする働きがある。私は『幸せホルモン』とも称されるセロトニンを脳内できちんと分泌させる『セロ活』を勧めている」という――。

※本稿は、有田秀穂『スマホ中毒からの心のモヤモヤをなくす小さな習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

セロトニン合成に必要な栄養素は普段の食事で十分

「セロトニン」は人間なら誰でも、年齢性別に関係なく、朝起きると脳内に分泌されます。覚醒中は持続的に分泌され、人間の心と体を元気な状態にします。セロトニンは、「元気な覚醒状態を演出する脳内物質」なのです。元気な状態であれば自律神経のバランスが整い、体調もよくなります。

つまりセロトニン神経を活性化させることで、「心が安定」→「自律神経のバランスが整う」→「心身ともに健康になる」という好循環を招くというわけです。

セロトニン合成に必要な栄養素は、トリプトファンという必須アミノ酸です。「必須」というのは「体外から吸収されなければならない栄養素」のことを意味します。

トリプトファンを含む食材は、大豆製品(豆腐・納豆・味噌・醤油など)と乳製品(牛乳・バター・チーズ・ヨーグルトなど)ですが、肉類にも含まれます。特別なメニューは必要ありません。和食でも洋食でも極端な偏食さえしなければ、普段の食事で無理なく摂取することができます。


体の細胞が「セロトニン」を合成するには、トリプトファン水酸化酵素が必要ですが、その酵素を持つ細胞は体内でかなり限定されます。人間の脳には約140億の神経細胞がありますが、トリプトファン水酸化酵素を備える神経細胞=セロトニン神経は、わずか数万個しかないのです。

セロトニン神経のある場所は、「脳幹」という脳の一番尻尾の部分。進化的に最も古い脳部位で、そこの細胞がトリプトファンを血液から取り込んで、セロトニンを合成するのです。

セロトニン神経はほんの数万個しかないのですが、これまでの脳科学研究で、ほぼ脳全体に「軸索」というケーブルを使って信号を送り、神経末端からセロトニンを分泌させることが明らかになりました。

クールな覚醒状態、思考力や判断力は最大限といいことずくめ

セロトニンは、次の6つの脳機能に影響を与えます。


・大脳皮質に影響を与えて、認知機能を鎮静させる。知性や損得勘定を抑えて「クールな覚醒状態」を形成させる。

・「人間性」の脳=前頭前野を活性化して、直感・共感性を高める。

・心の脳=大脳辺縁系に影響を与えて、平常心を形成させる。不安・緊張を抑え、怒りを静め、抑うつ気分を改善させる。

・交感神経の緊張を適度なレベルに調節する。朝の寝ぼけた体の状態を改善させる一方で、ストレスで過剰に興奮した交感神経を静める働きをする。

・顔つきを引き締め、姿勢をシャキッとさせ、ハツラツとした外見をもたらす。

・鎮痛効果。痛みを抑え、不定愁訴をコントロールする。

この結果、セロトニン神経が活性化すれば、私たちの心と体が健康になります。例えば、頭がよく働いて気分がすっきりする。セロトニンは大脳皮質に作用して、クールな覚醒状態をもたらすので、本来、自分が持っている思考力や判断力を最大限に発揮できます。

また、直感力や他人への共感力を高めるので、スムーズな人間関係を作るのに役立ちます。そして、神経の興奮状態を抑え、平常心を保つのに役立つので、不安や緊張、怒りの感情が減り、思わぬ失敗や後悔をすることは少なくなります。

さらに、朝起きてセロトニン神経が正常に働くと、副交感神経から交感神経への切り替えがスムーズになり、気持ちのよい目覚めがもたらされます。よい姿勢と若々しさを保つ効果も期待できます。

食と健康
「60代でも働き盛り」 社員の健康に資する常備型社食サービス、利用拡大を支えるのは「シニア世代の活躍」
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米消費者信用リスク、Z世代中心に悪化 学生ローンが

ビジネス

米財務長官「ブラード氏と良い話し合い」、次期FRB

ワールド

米・カタール、防衛協力強化協定とりまとめ近い ルビ

ビジネス

TikTok巡り19日の首脳会談で最終合意=米財務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中