犬は人の表情を読んでいる──あなたが愛犬に愛されているかは「目」でわかる

FOR THE LOVE OF DOG

2023年5月25日(木)14時55分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

230530p18NW_SGK_07.jpg

犬の脳には人間と共通の部分もあるが、全く異なる方法で世界を見ていることが、脳の研究によって明らかになった。品種改良も犬の脳の発達に影響を与えている CHAD LATTA/GETTY IMAGES

チャニの自宅には小さなオブジェがたくさん置いてあった。フリップは元気いっぱいで「興奮しやすい」性格だったが、それでも何かを倒したり壊したりすることは一度もなかった。ボールやおもちゃなどをテーブルから取ってくるよう命じると、フリップはいつも「細心の注意を払って」取ってきた。

その際、うっかり何かを動かしてしまった場合は「すぐに立ち止まり、助けを求めて私を見るか、吠えて合図をした」という。

フリップのこうした行動から、チャニとミクローシは「飼い犬の知能はオオカミより劣っている」とするミシガン大学の実験結果に疑問を抱くようになった。

もしかすると、犬にとっては人の行動を見て門の鍵を開けるのはたやすいことで、ただ「勝手に開けてはいけない」と思っているだけかもしれない。

チャニとミクローシは、複雑な仕掛けの実験を考案し、28頭の犬と飼い主に参加してもらった。この実験室で犬が肉を手に入れるためには、金網の向こう側にあるプラスチック皿の取っ手を引っ張る必要があった。

庭で大半の時間を過ごし、自立した行動に慣れていると思われる室外犬の場合、成功率は約3回に1回だった。一方、従順な室内犬は動かず、まず飼い主の許可を求めた。しかしOKが出ると、室外犬と同程度の成功率を示した。

犬の理解力を調べる実験では、いくつかの容器の1つに食べ物を隠した後、犬を部屋に連れてきて、どの容器に食べ物が入っているかを当てさせた。その際、飼い主は犬に対してさまざまな合図(正しい容器を見つめる、指差す、正しければうなずく、など)を送った。

人間の幼児で同様の実験を行うと、子供たちはすぐにヒントを読み取れる。だが猿やチンパンジーだと、訓練しない限りヒントを正しく理解できない。

一方、犬は幼児と同様にのみ込みが早く、人の指差しやうなずき、アイコンタクトなどをすぐに見分け、食べ物を手に入れた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

インド総選挙、首都などで6回目投票 猛暑で投票率低

ワールド

中国、台湾周辺での軍事演習終了 46機が中間線越え

ワールド

焦点:司法の掌握目論むトランプ氏、側近が描く人事と

ビジネス

アングル:企業投資はドイツからフランスへ、マクロン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ

  • 2

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 3

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリン・クラークを自身と重ねるレブロン「自分もその道を歩いた」

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 7

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 8

    テストステロン値が低いと早死にするリスクが高まる─…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    あり得ない密輸!動物87匹をテープで身体に貼り付け…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 7

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 8

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中