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ハラスメント

「後輩を誘い2人だけ残って稽古」はNG? 演劇界「ハラスメント勉強会」が突き付ける根源的な問い

2024年12月5日(木)16時00分
取材・文=柾木博行

昴では、今回の勉強会をきっかけとして今後ハラスメントのガイドラインを策定、相談の窓口を設置していくという。

「今日の講師の古元さんと劇団内の有志でガイドラインを作ることになります。それが出来たからってハラスメントがなくなるわけでもないですが、今後の啓発の意味も含めて作る感じですね」(制作・村上)

「相談窓口をどういう形で設置するのか、どう対応するのかなど、課題はたくさんあります。でもこの勉強会に40人以上が参加してくれて、年齢性別に関係なく同じことを考えられる仲間がいるっていうことは心強く感じました」(高山)

劇団昴はかつて文学座を脱退したメンバーによって設立された財団法人現代演劇協会傘下の劇団雲と劇団欅が前身。その後、この雲と欅を併合する形で昴が旗揚げされ、さまざまな活動を展開してきた。

その間、本拠地だった三百人劇場(東京都文京区)の閉館などの危機もあったが、付属養成所で若手俳優を育成しながら半世紀近い歴史を重ねてきた。今、ハラスメントという新しい問題に向き合うということも、多くの苦難を乗り越えてきた劇団の看板を守り、次代へつなげるための重要なステップなのだろう。

みんなで集まって勉強することで雰囲気が変わる

ミックスゾーン『エウリディケ』でのハラスメント予防の勉強会

ミックスゾーン『エウリディケ』でのハラスメント予防の勉強会(ミックスゾーン提供)

ここまでは劇団の事例をみてきたが、演劇界では作品ごとにスタッフ、出演者が集められて作品作りを行う「プロデュース公演」という形態もある。こうしたプロデュース公演の現場でもハラスメントについての啓蒙活動が行われるようになってきている。

ラジオ番組制作、イベント、音楽、演劇をはじめさまざまな事業を手掛ける株式会社ミックスゾーンの村上具子プロデューサーも、ハラスメント対策に積極的に取り組んでいる制作者のひとりだ。

もともと松竹で舞台制作を担当し、KAAT神奈川芸術劇場を経て、昨年1月から現在のミックスゾーンで演劇のプロデュース公演を手掛けているという村上プロデューサー。興行の世界に長年いただけに、かつてはジェンダーハラスメントなど、当たり前のように受けていたという。

「私が社会人になった頃は同期の男性にいろんな主な仕事が頼まれていて、私は補助的な仕事とお茶くみ、という状況でした。そういった男女の扱いの違いで長年葛藤もありましたが、数年前から女性が声を上げるようになり、だいぶ世の中は変わったと思いながらも、一方で会社組織となると、その壁を取り払うのには時間がかかると個人的にはずっと感じています」

そもそもなぜ、舞台の世界でハラスメントが起きやすいのか? 村上プロデューサーは次のように答える。

「やっぱり稽古場という密室に近いところで長期間稽古しているとハラスメントが起きやすいと感じます。特にプロデュース公演は作品ごとに稽古期間と本番の2、3カ月だけのお付き合いなので、ハラスメントが起きてもその時だけ我慢すればいいと思う人も多いのかもしれません。ですので一般の企業のように継続性を持って取り組むのは難しいですね」

現在、ミックスゾーンではプロデュース公演を行う際には村上も含めた各プロデューサーが公演の稽古開始を前にハラスメント勉強会を実施しているという。果たして勉強会を受けることで、実際の稽古場や舞台に変化は出るものなのか?

「みんなで集まって、その話をしたかどうかということで、その座組の雰囲気はやっぱり変わります。私が2022年にKAAT神奈川芸術劇場で制作、上演した『夜の女たち』では、実際ハラスメント勉強を行うことはなかったのですが(*)、劇場の総責任者である眞野純館長に『ハラスメントに気をつけて取り組む現場にします』と稽古開始の日に全体に話してもらいました。しっかりやりますよと宣言したことで、若手俳優の方含めて皆さんも、ホッとしたように見えました。『嫌なことは嫌と言っていいんだ』という安心した空気になりました。1度にガラッと環境を変えるのはなかなか難しいと思うので、ちょっとずつハラスメントをなくしていく、という意識を座組で持つことですね」

*KAAT神奈川芸術劇場では2023年10月にハラスメントについてのガイドラインを策定、ハラスメント相談窓口を整備して運用し、その後に講習も実施されている。

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