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ハラスメント

「後輩を誘い2人だけ残って稽古」はNG? 演劇界「ハラスメント勉強会」が突き付ける根源的な問い

2024年12月5日(木)16時00分
取材・文=柾木博行 (本誌記者)

劇団昴で行われたハラスメント予防の勉強会「安全・安心で自由な稽古場のために」

劇団昴で行われたハラスメント予防とリスペクトについての勉強会「安全・安心で自由な稽古場のために」 HISAKO KAWASAKI-NEWSWEEK JAPAN

ハラスメントにおける世代間ギャップ

ハラスメントについて受け取り方の違いが顕著に表れるのは世代ごとの差も影響するだろう。劇団昴には、20代の若手から80代の大ベテランまで、スタッフなども含めると120人以上が所属する。それぞれの価値観に違いがあり、受け取り方に違いが出るのも当然だ。

制作の村上は今の若い劇団員を見て、か弱い感じがすると言う。

「今の10代、20代の人はとても傷つきやすいなって思います。ある時の公演の稽古で、若い出演者が演出家のnote(*)に泣き出したり。自分を守る気持ちも強いのかも知れません。悔しさもあるのかも。もう少しタフでも良いかと思いますが。私たちから上の世代は、稽古の最中に泣くなんてとんでもないという世代なので驚きました。ただ、彼らのお父さんやお母さんよりも私の方が年上の場合が今は多く、親くらいの年上の人から怒られることは、彼らにとってどんな圧になるのかということは、最近よく考えます」
*いわゆる「ダメ出し」のこと。欧米の舞台芸術の世界では「note」と呼ばれ、日本でも近年はネガティブなイメージの「ダメ出し」と呼ばず「note」と呼ぶことが増えてきている。

何がハラスメントかは日々更新される

このように3時間もの勉強会を受けても、いや受けたからこそハラスメントについてのさまざまな疑問が出てきたという参加者たち。それだけに機会があればまた勉強会を受けてみたいと語っている。

「(勉強会の)休憩中に『1回じゃちょっと消化しきれないから、もう何回かやらないと自分自身に浸透しないかも』って言いに来た人がいたので、機会があればまたやりたいなと思ってます」(前述:高山)

「うちは養成所もあるので、授業という形であってもいいかもしれないと思いました。1度勉強会をしたからって、すぐに問題が解決するわけではないことは十分分かっているんですけど、少しずつ意識が変わっていけばいいかなと。公演の際に外部から参加するスタッフに対しても、何かあったときに『あ、これはハラスメントだ』と考えて話し合えたらいいと思いますね」(前述:村上)

「私、バイト先でハラスメントっぽいことをされた過去があって、その時に誰も頼る人がいなかったので、早く離れようと思ってそこを辞めたんですけど、誰か頼る人がいたら、もっといい対処ができたのかなって思う。そういったことを別の人にもアドバイスできるように、もしまた勉強会があったら受けてみたいです」(前述:若手俳優)

「ぜひ参加したい、いや、やっぱり知りたいです。(平田オリザ主宰の)劇団青年団さんはハラスメントのガイドラインを作っていて、そこには『ハラスメントは日々更新していくものです』って書いてある。確かにそうで、常にアップデートしていかないと、目の前で起きている問題の認識ができないと思います」(前述:マネージメント担当)

今回の勉強会の内容を受けて劇団で取り組めることとして、高山はLINEの使い方を挙げた。

「SNSの利用で一番問題が起きているのがLINEです。夜10時以降はダメというルールはあるんですけど、やっぱり先輩から送ってこられると既読スルーにはできません。今もLINE上でのハラスメントが見られますので、そういう部分についてはみんなで声を上げていこうと思います」

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