最新記事
ハラスメント

「後輩を誘い2人だけ残って稽古」はNG? 演劇界「ハラスメント勉強会」が突き付ける根源的な問い

2024年12月5日(木)16時00分
取材・文=柾木博行(本誌記者)

昴で舞台公演のプロデュース業務を担当する制作部門に長年在籍し、高山とともに今回の勉強会を開催した村上典子は、勉強会実施について次のように明かした。

「ハラスメントの勉強会をやりたいという気持ちはありましたけど、他劇団の制作部門の人たちが『制作部が窓口になってハラスメント委員会を作っても、逆にパワハラされると疑われないだろうか』と悩んでいましたし、うちでの実施は難しいかもと思ってました。でも今回催してみて、全部は理解できないですけどハラスメントってこういうことなんだ、と分かったのは良かったです」

実際に参加した者はどう受けとめたのか。劇団内で俳優のマネジメント担当者は参加した理由について次のように語る。

「自分は劇団員が外部の仕事をする際のマネージメント部と、養成所も担当しているんです。今すごくハラスメントって大きな問題です。その意味でもちろん参加しなきゃいけない立場なんですけど、個人的にも今どんなことがハラスメントに当たるのかなどすごく興味があって、参加しました」

また若手俳優の一人は、勉強会の内容を受けて自分なりにできることを考えたという。

「劇団にしても劇団じゃなくても、同じ年代の子同士で支え合うというか、大丈夫って声にかけに行くこととか、自分ももしやられたら、とりあえず1人で抱え込まないようにすることはできるのかなって、思いました」

何がハラスメントに当たるか、受け止め方に違いも

前述の「ハラスメント量的調査白書」では、表現の現場でハラスメントが横行していると指摘していたが、実際のところはどうなのか? 勉強会終了後に高山以外の参加者に聞いたところ、やはり多くの者がハラスメントを見聞きした経験があるということだった。

「15年くらい前に関西の別の劇団にいたんですが、その当時は人格否定されてどんどん追い詰めるような演出もありました」(前述:マネージメント担当)

「たくさんあります。いじめと一緒で、何か強く言われた記憶があると、自分がされたことを同じように他の人にする人もいましたし」(村上)

「知人が別のところで舞台に出たとき、アクションシーンが多くて、知人は未経験だったのに『アクションの手順を○○日迄に覚えられなかったら降ろす』みたいなことを言われたと相談されたことがありました」(前述:若手俳優)

一方で、高山を含めた参加者の多くが挙げていたのが、何がハラスメントに該当するのか判断が難しいという点だ。講師の古元は「(自分の行為がハラスメントだと)指摘されたときには反射的に否定をしないように」と話していたが、実際にハラスメントが問題化したときに裁定にあたる側はどう見極めるのか、難しいところだろう。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アルコア、第2四半期の受注は好調 関税の影響まだ見

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=

ビジネス

インタビュー:高付加価値なら米関税を克服可能、農水
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中