最新記事

飲み物

トマトジュースが機内で人気の理由

The Tomato Juice Effect

カギは「うま味」にあるのか、それとも身体機能の変化のせいか

2015年7月14日(火)19時45分
ジェシカ・ファーガー

味覚 地上で人気のコーラにも圧勝 TANJICHICA7/iStockphoto

 航空会社の幹部らはしばらく前から、奇妙な現象に首をひねってきた。出発ターミナルで人気の飲み物といえばコーラだし、スターバックスの行列も絶えない。だが機内サービスでは、普段はそれほど好まれることもないトマトジュースが一番人気なのだ。ドイツのルフトハンザ航空では毎年、ビールと同じくらいのトマトジュースが機内サービスで提供されている。

 多くの科学者が長年、その理由の解明を試みてきた。ある研究によれば、味の感じ方は食べ物や飲み物に関係する複数の感覚だけでなく、周囲の環境にも左右されるという。「機内は非日常的な環境で、人々はしばしば85デシベル以上の騒音の中で飲食をしている」と、実験心理学の専門誌に3月に発表された論文は指摘する。高デシベルの音は「うま味」を味わう感覚を研ぎ澄ますという。

 研究を行ったコーネル大学食品科学学部のチームは、民間航空機に乗ったときの聴覚経験を再現。男性11人と女性37人(18〜55歳)の被験者に甘味、塩味、酸味、苦味とうま味の5つの味覚を代表するサンプル食品を液体状にしたものを提供した。被験者は5種類の液体を、濃度を変えながら、機内と同じ騒音が聞こえるヘッドホンを着けた状態と外した状態で味わった。

 その結果、「同じ濃度でも騒々しい環境で提供された液体のほうがうま味を強く感じ、濃い液体ではその傾向がさらに強まった」と言う。つまり「空の旅での聴覚状態は、うま味をさらに強く感じさせる可能性があることが判明した」わけだ。

 うま味を豊富に含む食品には海藻やタラ、豚肉、醤油、マッシュルーム、パルメザンチーズ、それにトマトがある。これが機内でトマトジュースの人気が高いことの説明になりそうだと、コーネル大学の研究者たちは主張している。

 一方、機内で味覚が変わるのには別の生物学的要因があると指摘する声もある。人の身体機能は、高度1万㍍以上にいると少し変化する。高い場所では脳に運ばれる酸素量が減り、その状態に完全に順応するまで感覚がちょっと鈍くなる。

 しかも気圧の変化は鼻腔を膨張させ、これが味覚とつながりのある嗅覚を制限。多くの食べ物の味を感じにくくなる。この鈍った味覚を補うために、空の上ではより強くて、刺激のある風味が欲しくなるのかもしれない。トマトジュースのように。

[2015年7月 7日号掲載]

ニュース速報

ビジネス

前場の日経平均は大幅反発、原油減産合意受け資源株が

ワールド

フィリピンのドゥテルテ大統領、米との軍事演習は次回

ビジネス

日立・東芝・三菱重、原発燃料統合目指す 再稼働遅れ

ビジネス

小売業販売額、8月前年比-2.1% 台風や大雨も影

MAGAZINE

特集:進化する中国軍

2016-10・ 4号(9/27発売)

高学歴人材、最新鋭兵器、洗練された組織......。かつてのイメージを覆す人民解放軍の知られざる変貌

人気ランキング

  • 1

    ブルキニを禁じたフランスのパリがヌーディスト解禁へ

  • 2

    アーティスツ(1):会田誠の不安、村上隆の絶望

  • 3

    ロシアの最新型原潜、極東に配備

  • 4

    国際競争力ランキング、スイスが8年連続首位 日本は8位に後退

  • 5

    狭まる北朝鮮包囲網、友好国にも「金正恩離反」の兆候

  • 6

    自治体のPR動画「ウナギ少女」がまるで変態ホラーだと騒ぎに

  • 7

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 8

    米大統領選、第1回テレビ討論を世界はどう報じたか

  • 9

    打倒ディズニーを掲げる中国のテーマパーク

  • 10

    討論初戦はヒラリー圧勝、それでも読めない現状不満層の動向

  • 1

    クルーニー夫妻、虐殺でISISを告発。「覚悟はできている」

  • 2

    エジプトの過激派にナチスからの地雷の贈り物

  • 3

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 4

    X JAPANのYOSHIKI、ニューヨークでコンサートを行うと発表

  • 5

    中国機内誌が差別的記述、撤回しても消せない傍若無人ぶり

  • 6

    安楽死が合法的でなければ、私はとうに自殺していた

  • 7

    討論初戦はヒラリー圧勝、それでも読めない現状不満層の動向

  • 8

    ロシアの最新型原潜、極東に配備

  • 9

    米テレビ討論、クリントン「二重の負担」で不利

  • 10

    ヨーロッパを追われアメリカに逃れるロマの人々

  • 1

    金正恩「公式行事での姿勢が悪い」と副首相を処刑

  • 2

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 3

    クルーニー夫妻、虐殺でISISを告発。「覚悟はできている」

  • 4

    中国で性奴隷にされる脱北女性

  • 5

    改めて今、福原愛が中国人に愛されている理由を分析する

  • 6

    蓮舫氏へ、同じ「元・中国人、現・日本人」としての忠言

  • 7

    シロクマに包囲され逃げられないロシア観測隊、番犬犠牲に

  • 8

    「スタバやアマゾンはソーセージ屋台1軒より納税額が少ない」オーストリア首相が猛批判

  • 9

    「お母さんがねたので死にます」と自殺した子の母と闘った教師たち

  • 10

    核攻撃の兆候があれば、韓国は平壌を焼き尽くす

 日本再発見 「東京のワンテーマ・ミュージアム」
アンケート調査
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

0歳からの教育 育児編

絶賛発売中!

コラム

辣椒(ラージャオ、王立銘)

スマホに潜む「悪魔」が中国人を脅かす

パックン(パトリック・ハーラン)

芸人も真っ青? 冗談だらけのトランプ劇場

STORIES ARCHIVE

  • 2016年9月
  • 2016年8月
  • 2016年7月
  • 2016年6月
  • 2016年5月
  • 2016年4月