アングル:注射から飲み薬へ、米の新「減量薬」の普及が食品企業に迫る改革
写真は米ニューヨーク市のスーパーで買い物をする人々。2025年11月、ニューヨークで撮影。Reuters/Jeenah Moon
Jessica DiNapoli Waylon Cunningham
[ニューヨーク 12月24日 ロイター] - 米国では、食欲を抑える作用をもつ「GLP-1」系の肥満治療薬について、注射型ではなく、錠剤タイプの新薬が1月から入手できるようになる。アナリストによれば、これによって加工食品メーカーやファストフード店は、より多くの製品を改良する必要に迫られる可能性があるという。
注射ではなく錠剤として服用でき、薬価も下がる見通しのため、自分で注射を打つことに抵抗を持つ患者を中心に新薬を試す米国人が増えるとみられる。
米食品医薬品局(FDA)は12月、デンマーク製薬大手ノボノルディスクの「ウゴービ」のGLP-1錠剤を承認した。これを受け、23日には食品関連企業の株価が下落した。2026年には競合の米イーライ・リリーが開発中の治療薬も当局の承認を得るとの見方がある。
すでに、コナグラ・ブランズやネスレなどの食品企業は、減量注射薬の広がりを背景に、消費者の嗜好(しこう)が「高タンパク」「小分け」食品に移っている状況への対応に迫られていた。GLP-1薬の利用が一段と広がることで、食品の需要構造が長期的に変わる可能性があるとアナリストはみている。
企業側は対策として、タンパク質を増やした商品を宣伝したり、表示を調整して「GLP-1向け」とうたったり、大手小売りと組んで売り場での訴求を強めたりしている。
「人々は特に塩辛いスナック菓子、酒、炭酸飲料、飲料、菓子パンの摂取を減らし、タンパク質や食物繊維を重視するようになっている。食品会社やレストランは、こうした顧客層の要望に応えることになる」とオランダの金融機関ラボバンクの消費財アナリスト、JP・フロサード氏は述べた。「新薬の利用が広がれば、GLP-1利用者のニーズを織り込んだ商品の市場はさらに大きくなる」
ザックス・インベストメント・リサーチの株式ストラテジスト、アンドリュー・ロッコ氏は、ノボの新薬の承認を「画期的」と評した。同薬はウゴービの注射薬よりも安く、同等の減量効果が得られると見込まれるためだという。「食品業界では、高タンパク、小容量、そして機能性のある食品のイノベーションが必要になる」とロッコ氏は述べた。
<食品企業も変化を注視>
米政府の統計では、米国の成人のおよそ40%が肥満に当たる。保健政策の調査研究機関KFFが11月に公表した世論調査では、成人の約12%が現在GLP-1薬を使用していると答えた。
コーネル大の調査によると、GLP-1薬の使用者がいる世帯では、食料品店での支出が平均5.3%、ファストフード店での支出が平均で約8%減った。調査は、市場調査会社ニューメレーターが約15万世帯から収集した購入データを用いた。
ただし、こうした支出減は、薬の使用をやめるとおおむね薄れていった。
研究の共著者の一人であるシルビア・フリスタケバ氏は、「錠剤タイプの減量薬により(支出の)減少は、より幅広い層で起きる可能性が高い」とみる。錠剤は価格が安く、使い勝手もよいことから、服用期間が長くなる可能性もあるという。
コーネル大学の調査では、ヨーグルトや生鮮果物など一部の品目で支出がわずかに増えたことも判明した。企業側はこの動きを注視している。
コナグラは昨年、高タンパク・高食物繊維の冷凍食品「ヘルシー・チョイス」の一部で、「GLP-1に好適」と表示し始めた。広報担当者によると、同様の表示を掲げる競合品より販売の伸びが速いという。同社は今年5月に同じ表示を付けた新レシピを投入し、ウォルマートやクローガーなどの小売りと連携して売り場での訴求を進める計画だとしている。
「オイコス」ブランドのギリシャヨーグルトを手がける仏ダノンも声明で、高タンパク商品が2桁成長していると明らかにした。GLP-1薬の普及で、この流れが加速しているという。
世界最大の食品会社ネスレも、GLP-1の使用者に特化した冷凍食品「バイタル・パースート」を発売した。スイスにある同社はコメント要請に応じなかった。
メキシコ料理の外食チェーン、チポトレ・メキシカン・グリルは12月、チキンやステーキがセットになった「高タンパクメニュー」を追加した。
ここ数カ月、ファミリーレストランのオリーブガーデンなど一部の外食チェーンは、量を抑え、値ごろ感も打ち出したメニューを加えてきた。ヌードルズ&カンパニーのマーケティング責任者スティーブン・ケネディ氏は、こうした追加の狙いについて「食べ過ぎずに満足できる選択肢を用意することだ」と説明した。





