最新記事

映画

『アバター』×『ラブリーボーン』対談

2010年3月8日(月)14時41分
ラミン・セトゥデ(エンターテインメント担当)

ジャクソン 「まともじゃない」と再確認することもあったりして。

キャメロン 400人のなかで笑っているのが自分だけだとしたら、まともじゃないね。ともかく、そんな体験が変わるとは思えない。

 映画をダウンロードしてノートパソコンやiPodで見るスタイルが定着して、ずいぶんになる。しかし、新しいメディアの普及と反比例するように映画館の収益が落ちているわけではない。

 私が映画界に入った80年代前半は、ひどい不景気だった。劇場はビデオに儲けを奪われ、映画産業は青息吐息。まさに激動の時代だったが、やがて業界は安定を取り戻した。激動というのは、いつの間にか落ち着くものなんだ。

 映画は生き残るのか、それとも消えるのか──これが肝心な問いだ。しかし、映画が消えそうな兆候はないし、君と私は10年、20年先も自分が好きな作品を撮り続けているはずだよ。

誤解されるモーションキャプチャー

ジャクソン 同感。最近は配給や配信手段が多様化していて、これが面白い。例えば「Xboxライブ」は映画配信もするオンラインゲームサービスで、莫大な数のユーザーを獲得している。もうすぐ独自の映画コンテンツも製作し始めると思う。

 チャンスはたくさんあるんだ。それなのに映画界は守りに入っている。勇気を奮って攻めに出ようとする人間はあなたくらいだ。
キャメロン 世間の常識では、批判を物ともせずに新世界へ飛び出す人間をパイオニアと呼ぶんだ。

 いずれにしろ、3Dは定着するだろう。映画が白黒からカラーに変わったときと似ている。映画に色が付いたからといって、キャリアを断たれた俳優はいない。

 やがて観客と映画との一体感を高めようと、ラブストーリーやシリアスドラマに3Dを使う監督が出てくるだろう。今のところ、ハリウッドの大手は夢にも思っていないようだけどね。

ジャクソン 私は10分以内にそれが3Dだってことを忘れてしまうと思う。いい意味でね。3Dの問題点は映像の暗さだけだ。それも技術的問題にすぎないから、簡単に克服できると思う。

キャメロン もう克服した。明るさの問題は技術的に解決している。とてもいい映像になったよ。

ジャクソン 3Dに眼鏡が必要じゃなくなるまで、あとどれくらいかかるのかな?

キャメロン ノートパソコンや、やや小さめのプラズマディスプレイのサイズでうまくいったのを見た。画像が二重に見えないようにするには、自分の頭を正しい位置に持っていく必要がある。でも、みんなきれいな画像を見るためにディスプレイを動かすのには慣れている。それと同じことだ。

 3、4年後には、眼鏡なしで3D映画を見られるiPhoneができるんじゃないかな。もちろん、その前にノートパソコンで見られるようになる。

 最初に売れるのは眼鏡を使えるようにしたディスプレイだろう。使い捨ての眼鏡をたくさん用意して、家でスーパーボウル観戦パーティーもできる。次に眼鏡なしで見られるものが普及するだろう。5年以内にそうなると思う。

ジャクソン 今はまだモーションキャプチャーは誤解されている。

キャメロン 君の『ロード・オブ・ザ・リング』の第2部、第3部に登場したゴラムはモーションキャプチャーの最初の成功例の1つだね。映画の世界に新しいアイデアが突然出現して、人間以外のキャラクターも魂を持てるようになった。

ジャクソン ゴラムとキング・コングで肝心なのは目だった。これまでのCG映画史上で最も素晴らしい目になったと思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ議会、8日に鉱物資源協定批准の採決と議員

ビジネス

仏ラクタリスのフォンテラ資産買収計画、豪州が非公式

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、4月は横ばい サービス上昇でコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中