最新記事
BOOKS

【影響力を上げる】「個人の想い」で「社会」を動かした、本物のインフルエンス戦略とは?

2025年3月6日(木)11時31分
河村正剛

◎ 児童養護施設や児童相談所の存在を社会に知ってもらうこと
◎ そこで暮らす子どもたちの現状を伝えること
◎ より多くの支援の輪を広げること

それが意図でした。ランドセルを10個も購入するという一見突飛に見える行動は、社会的養護の現状を可視化し、支援の必要性を訴えかけるために、私なりに周到に用意した計画の第一歩でした。

贈り主の名前を漫画『タイガーマスク』の主人公にした理由

12月25日深夜1時。私は車のリアシートにランドセルを積み、目的の児童相談所に向かいました。ランドセルの寄付は緊張感の中で慎重に行わなければなりませんでした。車から次々と荷物を降ろしました。怪しすぎる人です。しかし荷物を降ろしきることができました。

「子どもたちのために使ってください」という手書きの手紙を添えました。贈り主の名前は「伊達直人」。

「伊達直人」という名前を使ったのは戦略があってのことでした。伊達直人は1968年に連載が始まった漫画『タイガーマスク』(梶原一騎原作、辻なおき作画、講談社)の主人公です。『タイガーマスク』は1969年にはアニメ化されました。テーマ曲は250万枚も売れたそうです。その時代背景こそが重要でした。

私がランドセルを置いたのは2010年のクリスマスです。2010年当時、『タイガーマスク』に夢中になっていたかつての子どもたちはすでに50代になっていました。50代といえば、企業ならば経営層、行政ならば上級職と、社会で影響力を持つ立場にいる世代です。私は、伊達直人の名で「世の中を動かしている世代」に向けてメッセージを送ったのです。

『タイガーマスク』は、作品のストーリーもこの計画にフィットしていました。

◎ 主人公の伊達直人が孤児であること
◎ 伊達直人は子どもたちのために戦うヒーローであること
◎ 伊達直人は匿名で孤児たちにファイトマネーを送っていたこと

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定「完全な経済協力」、対ロ交渉

ビジネス

トムソン・ロイター、25年ガイダンスを再確認 第1

ワールド

3日に予定の米イラン第4回核協議、来週まで延期の公

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中