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心理学

「ネガティブ思考」が変わる「コーピング理論」とは何か?...「レジリエンス」を高める2つのステップ

2024年5月2日(木)10時00分
ニコール・ルペラ(心理学博士)

欲求が満たされない状態が続くと、苦しみや分離は悪化する。自分を守るつもりが、自分への裏切りにつながっていくのだ。

私たちはこのループに、簡単にはまり込んでしまう。未解決のトラウマに不適切なコーピングを行い、自分を否定し続ける―という悪循環のせいで、苦しみが心身で生き続け、それが原因で病気になることもある。


変化のポテンシャルを高める2つのステップ

私たちはみんな、未解決のトラウマを抱えている。心に何が刻み込まれるかを決めるのは、出来事そのものの過酷さよりも、それに対する自分の反応だ。打たれ強さ(レジリエンス)は、条件づけを通して学習される。

幼い頃に親から手本を示してもらえないと、一生学べないかもしれない。ただし、トラウマを解決する「ワーク」に取り組めば、レジリエンスを高められる。それどころか、その経験が大きな変革のきっかけになるだろう。

「セルフ・ヒーラーズ」のコミュニティでトラウマに関する情報をシェアすると、多くのフィードバックが届く。みんなから「誰もがトラウマを抱えている、という意味ですか?」「どうすればわが子にトラウマを与えずにすみますか?」などと質問される。では、答えを言おう。

トラウマは人生の一部だから、避けられない。あなたがこの世で最初に経験したこと― 誕生―だってトラウマだった。もしかしたら、あなただけでなく母親にとっても。とはいえ、トラウマを経験したからといって、人生で苦労や病気に見舞われる、と運命づけられているわけではない。

幼い頃の人生を形づくっていたパターンをわざわざ繰り返さなくてもいいのだ。「ワーク」に取り組めば、私たちは変われる。前に進めるし、癒やされる。

トラウマは普遍的なものかもしれないけれど、個人的なものでもあり、その人全体──神経系、免疫反応、生理機能のあらゆる領域── に影響を及ぼしている。一人一人違った形で。

心身を癒やす第一歩は、自分が何に対処しているかを知ること。そう、未解決のトラウマを明らかにすることだ。

第二のステップは、そのトラウマの長期的な影響と、自分が学習したコーピングが、いかに自分を行き詰まらせているのかを理解することだ。


ニコール・ルペラ(Dr. Nicole LePera)
心理学博士。ホリスティック心理学の第一人者。ペンシルベニア州フィラデルフィアで育ち、コーネル大学とニュースクール・フォー・ソーシャル・リサーチ(ニュースクール大学の前身)で臨床心理学のトレーニングを受ける。臨床心理学者としてクリニックを開業し、心・身体・魂の健康に総合的に取り組む「ホリスティック心理学」を生み出す。


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