最新記事
マイクロファイナンス

途上国ビジネスとODAが果たす役割とは? 「民間版の世界銀行」を目指す五常・アンド・カンパニーの挑戦

2024年3月11日(月)11時30分
※JICAトピックスより転載
慎泰俊氏(左)と小豆澤英豪氏

五常・アンド・カンパニー代表執行役・創業者の慎泰俊氏(左)とJICA民間連携事業部部長の小豆澤英豪氏(右)。この対談は五常・アンド・カンパニー(東京)で行われた

<アジア5カ国でマイクロファイナンス事業を展開する五常・アンド・カンパニーの代表執行役で創業者の慎泰俊氏と、同社に出資するJICAの民間連携事業部部長・小豆澤英豪氏による対談。途上国の社会課題解決に向けたビジネスの可能性と今後のODAの在り方について語る>

開発途上国のさまざまな社会課題の解決には、民間の資金や技術、アイデアが必要です。そのため、これからのODA(政府開発援助)にとって民間企業との連携はますます重要になっています。ODAの実施機関であるJICAは、民間企業が自らの技術やノウハウを活用して途上国の社会的課題の解決や経済発展に貢献しながら、同時にビジネスを拡大させていく取り組みをサポートしています。

その代表例の一つが、現在、アジア5カ国でマイクロファイナンス(貧困層や低所得者層に向けた小口融資)事業を展開する五常・アンド・カンパニーへの協力です。同社は2014年創業のスタートアップで、誰もが金融サービスにアクセスできる世界の実現に向けて順調に事業成長を続け、開発インパクトを生み出し、広く注目を集めています。Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング2024」で第1位に選ばれた同社代表執行役・創業者の慎泰俊氏とJICA民間連携事業部部長の小豆澤英豪氏が、途上国の社会課題の解決に向けたビジネスの可能性、今後のODAの在り方について語ります。

>>JICAの民間企業支援に向けた詳細はこちら

価値観を共有するパートナー同士、立場を超えてより良い世界の実現を目指す


小豆澤 JICAは2019年に五常・アンド・カンパニー(以下「五常」)との間で約10億円の出資契約を締結しました。五常とJICAは目指すものが共通しています。五常は、「誰もが自分の未来を決めることができる世界」をビジョンとして掲げていますが、実はJICAも「人々が明るい未来を信じ多様な可能性を追求できる、自由で平和かつ豊かな世界を希求する」ことをビジョンとしています。JICAはこれまでも貧困削減や金融包摂の分野への協力を実施していますが、JICA自身は現地に金融機関を持たないため、一人ひとりに直接、金融サービスを提供することができません。JICAにできない部分を五常と協力することで取り組むことができるのです。

 現在、カンボジア、スリランカ、ミャンマー、インド、タジキスタンでマイクロファイナンス事業を展開しています。JICAがこれまで途上国で積み重ねてきた実績や知名度、そして途上国の人々から得ている信頼は非常に大きいと感じます。途上国で事業を進めるにあたり、特に金融という規制産業では、JICAから資金を調達しているという事実は追い風になり、助けになりました。また、五常が事業を展開する各国にはJICAの事務所があり、現地のさまざまな情報にアクセスでき、意見の交換ができることも大きな利点です。

jica_gojo1.jpg

五常の現地グループ会社であるSejaya社からのマイクロファイナンスを利用し、ミシンを購入して衣料品の製造・販売を始めた女性(右)。その後、事業を拡大し、従業員を雇用するまでに成長させた(スリランカ)。世界では10億人をこえる人々が金融サービスにアクセスできていないとされる

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米シェブロン、4月に最も空売りされた米大型株に テ

ワールド

米ユーチューブ、香港で民主派楽曲へのアクセス遮断 

ワールド

英米当局者、中国のサイバー脅威に警鐘 「今後数年は

ビジネス

メタ、Workplace打ち切りへ AIとメタバー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中