最新記事
DE&I

障がいのある人に、「アートの力」で自信と生きる道を──ものづくりブランド「fa」の挑戦

PR

2023年11月15日(水)10時00分
写真:遠藤宏 文:一ノ瀬伸
ライフスタイルブランド「fa」の西村史彦氏

「GENIUS」のアーティストのデザインが採用された「fa」の商品について説明する西村史彦氏

<アートなら、もっと輝ける人がいる...。障がいを抱える人たちが描いたデザインを商品化し、彼らに自信と生きる道を提示する「fa」の思いに迫る>

印象的なビジュアルがデザインされたアパレルや日用品を手がける「fa(ファア)」。そのユニークなアートはどうやって生み出されているのだろうか? ハンデを超えて強みや個性を発揮するアーティストたちが集まる佐賀市内のアトリエを訪ねた。

「障がい」「福祉」を語らない理由

「アートを使う、アートと暮らす。」をコンセプトとして、2020年に立ち上がったライフスタイルブランド「fa(ファア)」。独創的で目を引くデザインのイラストが入ったTシャツやキャップ、マグカップ、クッションなどを制作している。

商品にあしらわれるアートは、佐賀市内のアトリエで生み出されている。そのアトリエとは、就労継続支援B型事業所「GENIUS(ジーニアス)」。知的障がいや精神疾患などのある利用者たちが日々、制作活動を行なっている。彼らは、作品制作や仲間との交流を通じて就労訓練を行なうともに、個々人で作品をつくるアーティストだ。

就労継続支援B型事業所「GENIUS」のアトリエ内部

アトリエで思い思いの作品作りに没頭する「GENIUS」のアーティストたち

「fa」のそうした制作の背景を知らないまま、ただ商品を気に入って購入したという人も少なくないはずだ。というのも、「fa」のオンラインストアやSNSなどでは、これらのデザインが障がいのある人によるアートだと積極的には語っていないからだ。

「ブランドでは、障がいも福祉もあまり表に出していません。障がいというタグづけで見るのではなくて、まず純粋に作品自体を見ていただきたい。そのデザインやアートそのものを素敵だなと思ってもらうことを入り口にして、そのうえでアーティストのキャラクターを知ってもらいたいと考えているんです」

「GENIUS」を運営する「すみなす」代表の西村史彦氏(37歳)はそう語る。

アートに障がいも障壁もない

西村氏によって「fa」や「GENIUS」が始動した背景を説明するには、西村氏自身の半生を少しさかのぼる必要があるだろう。佐賀市で生まれ育った西村氏は、自身も「表現」と切り離せない日々を送ってきた。

子どもの頃から絵を描くことが好きで、高校時代には仲間とバンド活動に明け暮れた。大学の芸術学部に進学するもすぐに中退。5年ほどの会社員生活を経て、20代半ばにはカナダへと渡ってレゲエを歌った。「ものごとが続かなくて、上手に生きられないなと思うことがありました」と西村氏は振り返る。

カナダから帰国後に、母親が経営する高齢者介護施設で働き始めて福祉との関わりを持ち約8年間勤務。その間に結婚し、授かった長男は足に生まれながらの障がいがあった。街中で見かけた障がいのあるアーティストの作品に深く感動したのもその頃だった。「これまでの経験がバチッとかみ合ったように感じました」と障がい者就労支援事業を起こし、「『生きづらさ』を『おもしろさ』に転換する」というビジョンを掲げた。

ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中