最新記事

日本社会

日本の郊外にあふれる「タダ同然の住宅地」 無責任な開発が生んだ「限界分譲地」問題とは

2022年8月15日(月)16時30分
吉川祐介(ブロガー) *PRESIDENT Onlineからの転載
雑誌が生い茂る郊外のミニ分譲地

郊外とも呼べない農村部に、大量に開発された投機商品のミニ分譲地が今も残されている。筆者提供


日本の郊外には「タダ同然の住宅地」が大量にある。そうした「限界分譲地」の取材を続けているブロガーの吉川祐介さんは「限界分譲地は戦後の土地開発ブームに乗じて作られた。居住ではなく投機が目的だったため、放棄された空き地が虫食い上に広がっている。限界分譲地に住むことは可能だが、自治会は機能せず、道路や公園は雑草で埋もれることもある」という――。


日本に点在する、忘れ去られた分譲地

戦後の日本は近年に至るまで、深刻な住宅問題を長く抱えてきた。

終戦直後は、空襲で家を失った人や復員兵や引き揚げ者の住宅の確保。人口増と高度成長がもたらした都市の過密と住宅不足、そして住環境の悪化という問題があった。

過熱する土地開発ブームによる地価の高騰などもあり、どの時代においても庶民は、激変する社会情勢の中で、ひとつのマイホームを確保するのが精いっぱいの状況だった。

地価高騰の時代と聞くと、1980年代末ごろのバブル経済期を連想しがちだ。しかし首都圏では、60年代後半ごろの時点ですでに、都心部とその周辺エリアの地価は、一般の給与所得者の収入では到底手が出せる価格帯ではなくなっていた。

都心部ではすでに民間の分譲マンションの建設・販売も進んでいたものの、国内全体としては、まだ大型の集合住宅も少なかった時代である。

宅地開発がピークに達した70年代初頭の一般の庶民向けの住宅分譲地は、都心から電車で1時間半~2時間以上もかかる郊外部に開発されるのが通例であった。煤煙と土壌汚染に悩まされた時代には、郊外住宅地は住環境の面において魅力があった。

現代では東京都内の住環境は劇的に改善し、かつて町工場がひしめいていた23区東部の下町エリアも人気のベッドタウンへと変貌した。

すでに時代は人口減の段階に突入している。交通不便な立地のベッドタウンは訴求力も低下し、地価も下落の一途をたどっている。高度成長期の郊外住宅地の住民は高齢化し、若年層の流入は進まず、過去の「ニュータウン」が「オールドタウン」となった。

ときに「限界ニュータウン」と称呼され、その問題が取り沙汰される機会も多くなってきた。だが、そのさらに外側にも忘れ去られた分譲地が点在している。これが本稿のテーマだ。

乱開発の証、「限界分譲地」とは何か

郊外型ニュータウンのさらに外側。1970年代の時点でもベッドタウンに適していたとは思えないような交通不便な農村エリアに、小規模な住宅分譲地が乱開発された。

今も多くが放置されている問題は、これまであまり大きく取り上げられてこなかったように思う。特に現在筆者が在住する千葉県の北東部エリアは、およそ計画性のかけらもない、おびただしい数のミニ分譲地が散在している地域である。

筆者は自分のブログ上で「限界分譲地」と呼称してきた。これらのミニ分譲地は、今となっては住宅地としての再利用も困難なほど荒廃しているところも少なくない。

限界分譲地が抱える問題は、人口が減少して高齢化が進んでいるから衰退している、というような単純な話ではない(もちろん遠因の一つではあるが)。その多くは実際に人が住むことを十分に想定しないまま、ただ増大する土地需要に応える形で無秩序に増殖した。

これが今日の衰退・荒廃の最大の要因である。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

マクロスコープ:FRB議長人事、「無難で安心感」と

ビジネス

野村HD、10-12月期純利益は一時費用で10%減

ビジネス

日経平均は4日ぶり小反落、朝安後は下げ一服 個別物

ワールド

小泉防衛相、日米韓の防衛協力これまで以上に重要 韓
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大胆な犯行の一部始終を捉えた「衝撃映像」が話題に
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 8
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 9
    配達ライダーを飲み込んだ深さ20メートルの穴 日本…
  • 10
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中