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なぜサントリーは大阪市で家庭ゴミ回収を始めたのか? プラゴミ深刻化の影響とは

2019年12月25日(水)18時00分
兵頭 輝夏(東洋経済 記者) *東洋経済オンラインからの転載

大阪府と大阪市は2019年6月に大阪で開催されたG20に先立ち、1月に「おおさかプラスチックごみゼロ宣言」を採択した。脱プラスチックへの意識が高まりつつある中、大阪万博が開催される2025年までに、使い捨てプラスチックの削減やリサイクルを推進する目標を大阪府と市で共同宣言した。

サントリーが回収に携わる大阪市鶴見区緑地地区は、もともと地域コミュニティーで古紙回収を行うなど、環境対策への取り組みが熱心な地域だった。大阪市環境局の松山氏は「この地域の方々は協力的で事業に参加してくれている」と話す。

それにしても、サントリーはなぜ自治体からペットボトルを回収する必要があるのだろうか。

日本は世界2位のプラゴミ排出大国

背景には、脱プラスチックへの関心の高まりがある。日本は1人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量がアメリカに次いで2番目に多い「プラスチックゴミ排出大国」だ。

海洋汚染やCO2対策などの観点から2019年に注目が高まった。これを受け、富士通は6月から社内自動販売機でペットボトル販売を取りやめるなど、全国の事業所などで年間約700万本の削減を進める。ソニーも同様の取り組みを開始するなど、各方面でペットボトルの利用を削減する動きがある。

これらの「脱・ペットボトル」の動きに対し、日本コカ・コーラやサントリーなどの飲料メーカー大手が対応を急ぐのが、ペットボトル容器のリサイクルだ。現状では、全国で回収されたペットボトルのうち、ペットボトルへリサイクルされるのは約2割しかない。その他の多くは繊維やシートなど他の素材へリサイクルされるか、焼却される。

サントリーは「ペットボトルを最も効率よく循環できる方法は、ペットボトルに再生すること」としている。ペットボトルへリサイクルすることと違い、衣服などの異素材にいったんリサイクルすると、ペットボトルに再生できなくなるためだ。また、新規にペットボトルを作るには石油資源を使い、より多くの二酸化炭素を排出することになる。

このためサントリーHDは、2030年までに世界で使用するすべてのペットボトルで、石油由来原料をゼロにする目標を掲げ、それを達成するために約500億円を投資する。子会社のサントリー食品インターナショナルでは2025年までに国内清涼飲料事業における全ペットボトル重量の半分以上で、再生PET素材を使用することを目標に掲げる。

日本コカ・コーラも2022年までに、国内で使用する原材料の半分以上を再生ペットボトルにすることを目標にしている。現在の再生ペットボトル使用量は、サントリーは世界で約1割、国内は約2割、日本コカ・コーラは約17%にとどまる。

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