最新記事

日本経済

「日本企業は今の半分に減るべきだ」デービッド・アトキンソン大胆提言

2018年3月3日(土)10時35分
デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)※東洋経済オンラインより転載

「先進国最低」の日本の生産性を、どのように高めればいいのでしょうか(画像:SeanPavonePhoto-iStock.)


日本でもようやく、「生産性」の大切さが認識され始めてきた。「生産性の向上」についてさまざまな議論が展開されているが、『新・観光立国論』(山本七平賞)で日本の観光政策に多大な影響を与えたデービッド・アトキンソン氏は、その多くが根本的に間違っているという。34年間の集大成として「日本経済改革の本丸=生産性」に切り込んだ新刊『新・生産性立国論』を上梓したアトキンソン氏に、真の生産性革命に必要な改革を解説してもらう。

皆さんもご存じのとおり、日本ではすでに人口が減り始めています。人口が減る以上、GDPを維持するためには生産性を高めるしかありません。「GDP=人口×1人あたりの生産性」だからです。

それにはさまざまな改革が求められます。今回はその1つ、日本の企業数を大胆に減らすという改革について、考えたいと思います。

日本人は「人口減少」をなめている

その前に、まずは日本における人口減少のインパクトを改めて確認しましょう。

日本の人口の減少、特に生産年齢人口の大幅減少は、「経済の常識」を根本から変えるだけではなく、社会のあり方そのものを一変させてしまう、国にとっての一大事です。日本という国は、有史以来の未曾有の事態を迎える、スタートラインに立たされているのです。

しかしながら、この一大事に対して、当事者である日本人自身はあまり危機感を覚えているようには思えません。おそらく、人口減少が始まってしまったことは知りつつも、その規模や脅威がどれほどのものになるのか、正確に認識している人が少ないのがその理由ではないでしょうか。

そこでまず、今後の日本でどれほど人口が減ってしまうのか、その衝撃の数字を確認しましょう。

国立社会保障・人口問題研究所の2012年の推計では、2060年までに、2015年と比較して生産年齢人口が「3264万人」減ると言われています。この規模は、世界第5位の経済規模を誇るイギリスの就業人口とほぼ同じで、同じく経済規模世界第10位のカナダの総人口を上回ります。

人口減少が進んでいるのは日本だけではなく、一部の先進国でも同様です。しかし、同期間の人口減少は、ドイツで約1000万人、イタリアが約500万人、スペインは約300万人と、日本がその規模で他国を圧倒しています。

つまり、これから数十年間にわたり、日本だけが他の先進諸国とはまったく違う経済環境に置かれ、どこよりも厳しい経済対策を強いられることになるのです。

マスコミなどを見ていると、移民を迎えたりロボットを導入することで、人口減少に対応できるというコメントをよく見ます。ここからも、多くの人は人口減少をただの言葉としてとらえており、その規模と意義を正しく把握しておらず、「のほほん」としている印象を受けます。

人口と経済には関係がないなど、とぼけたことを言う人すらいますが、今現在の先進国の経済規模ランキングは完全に人口ランキングを反映しているので、その指摘はまったくの誤りです。人口が減ることで消費者が減り、需要が減少して、需給バランスが崩れる傾向が強くなります。

そこで、やはり需給の調整が必要となります。


『新・生産性立国論』
 デービッド・アトキンソン 著
 東洋経済新報社

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中