最新記事

ビジネススキル

経営コンサルタントはすぐに解雇しなさい

2015年8月27日(木)19時00分

 自分自身にも問いかけてみたらいい。もし簡単な仕事を頼むとしたら、論理的な人と情熱にあふれた人の、どちらにするだろうか? 私ならば前者を選ぶが、あなたもきっとそうだろう。

 だが、もしそれがほとんど不可能に近い難題だったらどうだろうか。私だったら、激しい情熱を持った人を選ぶだろう。彼らは不可能なことを可能なものに変えてしまう生々しい感情のパワーを持っているからだ。論理的な人間に頼んでも、彼は不可能な理由を説明するだけだろう。

 それが問題なのだ。論理的・理性的な人は先を見通せる普通の業務には長けており、ゆっくりと着実に進めて現状維持していく類の仕事には向いている。だが、並外れたことを要求される仕事や、物事の変革を求められる仕事、また大きな挑戦を必要とされる仕事は、論理的なタイプには手に負えない。そこでは情熱がものを言うのだ。

 納税申告書に記入したり食洗機を修理したりするには頭が必要だが、暴君を倒したり、ソネットを書いたり、大問題を解決したり、まったく新しいやり方で考えようとするときには情熱が欠かせない。

 ビジネスの世界では、このことが驚くほど理解されていない。大企業はきわめて安定感が高いので、リスクを強く恐れる従業員たちが吸い寄せられてくる。ビジネスの本質的な役割は、昨日よりも明日、より多く稼ぐことにあるため、売上、コスト、利益などの数字を重視する企業文化が強調される。そして、数字ばかりにとらわれた文化では、やがてアイデアという重要なものが見失われていく。

 それゆえ、大企業にはどうしてもリスクを恐れる人々が供給されることになる。数字という見かけの力を重視してアイデアの真の力をないがしろにする文化では、彼らが情熱よりも論理を重んじるようになるのも無理はない。この世界でただ生き延びたいだけなら、彼らを見習うといい。

 だが、生き延びることではなく成功を願うのなら、考え方を変えなくてはいけない。

 情熱がもたらすエネルギーを大事にしなくてはいけない。たいていの偉業は貪欲と野心と、勝利へのひたむきな意欲に駆り立てられたものなのだ。

 自分の仕事場で、それをどう実践したらいいのだろうか? もちろん、論理と理性的な評価を無視してはいけない。きわめて情熱的な人でも、仕事の土台となる理解というプラットフォームが必要だ。だがいったん理解したら、事を起こして以前にはなかった答えを見つけ出さなくてはいけない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中