最新記事

ニュースデータ

部活指導に時間を食われる日本の教師は「何でも屋」?

教員が授業に専念できない、日本の教育現場の過酷な現状が国際比較で明らかに

2015年8月18日(火)18時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

教師の本分とは? 日本の教師は授業以外の雑務に追われている ferrantraite-iStockphoto.com

 2013年に経済協力開発機構(OECD)が実施した国際教員指導環境調査(TALIS 2013)で、日本の教員の勤務時間が世界一長いことが分かり注目を集めた。

 しかし本当に注目すべきなのは仕事の中身だ。教員は知識や技術を授ける専門職なのに、日本ではまったく別の職務を多く担わされている。特に諸外国から見て奇異に見られかねないのは、部活指導が大きな位置を占めていることだ。

 中学校や高等学校の部活は、課外活動(extracurricular activities)の一環であって、正規の授業とは異なる。実施するかどうかは各学校の任意に委ねられ、教員免許を持つ者が指導にあたる必要もないが、日本では指導の大半を教員が担っている。

 横軸に中学校教員の総勤務時間、縦軸に課外活動の指導時間をとった座標上に34の国を配置すると、下の<図1>のようになる。課外活動とは、放課後のスポーツや芸術活動のことで、日本で言う部活に相当する。

maita20150818-chart3.png

 日本は週間の総勤務時間が53.9時間、そのうち課外活動の指導時間が7.7時間と、両方とも比較国中で最も長く、グラフ上では右上の外れたところに位置している。部活指導が勤務全体の14.2%、約7分の1を占めている。

 他の国では勤務時間の短さもさることながら、課外活動の指導時間も総じて短い。韓国とアメリカは週3時間、イギリスは2時間、フランスは1時間ほどで、北欧の2カ国ではほぼゼロだ。これらの国では学校の部活という概念がなく、放課後の課外活動は地域のスポーツクラブなどに委ねられているためだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ビジネス

米新規失業保険申請件数、1.3万件減の22万400

ビジネス

米11月CPI、前年比2.7%上昇 セールで伸び鈍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 7
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 8
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 9
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中