最新記事

経済

原油価格「急落」の複雑なカラクリ

リビア情勢からシェールガス革命まで多くの要因が絡み合う

2014年10月27日(月)12時24分
マリア・ガルーチ

見えない兆し アメリカ経済が回復すれば原油価格も上がるはずだが Bariscan Celik/Getty Images

 10月2日、世界の原油市場に激震が走った。この数カ月間、緩やかな下降線をたどっていた原油価格が急落したのだ。

 国際的な指標となるブレント原油価格は一気に2%近く下げ、2年3カ月ぶりの安値を記録。アメリカの原油価格の指標とされるウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)も先週、1バレル=85ドル台にまで下落した。

 引き金となったのは、世界最大の産油国サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが前日に、アジアとアメリカ向けの原油輸出価格を大幅に引き下げたこと。それまでアナリストは、サウジアラビアを含むOPEC(石油輸出国機構)加盟国が価格を下支えするために減産に踏み切るだろうと予測していた。

 ところがサウジアラビアはあえて値下げに踏み切り、市場シェアを守る道を選んだ。これによって競争力の低い他の産油国が市場から締め出される恐れがあると、TD証券(トロント)のアナリスト、マイケル・ローウェンは指摘する。

シェールガス革命の「副作用」

 ただしサウジアラビアの動きは価格下落の要因の1つにすぎない。その直前にはアメリカと中国の製造業の成長が予想を下回ると報じられ、原油需要が減速するとの見方が広がっていた。

 9月末に発表されたアメリカの消費者信頼感指数も4カ月ぶりの低水準。アメリカ経済が回復すれば原油価格も上がるはずだが、「指標を見る限り、その方向には向かっていない」と、ローウェンは言う。

 さらにヨーロッパでは景気低迷とデフレの影響で原油需要が減少し、中国のGDP成長率の見通しも下方修正が繰り返されている。9月には国際エネルギー機関(IEA)が、今年の石油需要の見通しを3カ月連続で引き下げた。

 需要減による価格の下落に追い打ちをかけるのが、供給の過剰。その最大の要因は、アメリカのシェールガス革命にある。

 米エネルギー情報局(EIA)によれば、シェールガス掘削ブームに乗ってアメリカの今年の原油生産量は過去30年ほどで最高となる日量850万バレルに達する見通しだという。

 アメリカの生産量の急増は国際市場にも影響を及ぼす。アメリカでは05年に国内消費の60%を占めていた外国産原油が、16年には25%まで減る見込みだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ホルムズ海峡の航行状況注視 イラン作戦終了後ガ

ワールド

バンス米副大統領、イラン安保協議に政権当初から参加

ワールド

ロ、イランへの情報提供巡り米を「脅迫」 ウ大統領が

ワールド

イラン外相、米国との協議実施を否定 交戦終結案検討
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 2
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 3
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆保険」を達成した中国の医療保険の実態とは
  • 4
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 5
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 6
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 7
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 8
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 9
    地上侵攻もありえる...イラン戦争が今後たどり得る「…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 9
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 10
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中