最新記事

新ビジネス

「タクシー業界の敵」で「破壊的」なUberとは

スマホでタクシーを呼べる配車サービスは既存の業界の厳しい風当たりをバネに市場を拡大中

2014年9月4日(木)18時19分
アリソン・グリズウォルド

業界の危機 「白タク」アプリUberがロンドンの名物タクシーを脅かす Stefan Wermuth-Reuters

 スマートフォンで手軽にハイヤーやタクシーを呼べる配車サービス「Uber(ウーバー)」。シリコンバレー生まれのこの「破壊的」な新サービスはタクシー業界に激震を巻き起こしながら、世界中の都市に着々と進出している。

 利用者はUberにクレジットカード番号を登録し、スマホに専用アプリをダウンロードする。タクシーが必要なときはアプリを開いて地図をタップすれば、近くにいるUberの契約ドライバーが駆け付けてくれる。料金はアプリで自動的に決済する仕組みだ。
 
 このサービスにレッドカードを突きつけたのは、既存のタクシー業界だ。業界が反発するのは、Uberが事実上タクシー事業を展開しながら、タクシーの営業許可を取っていないこと。規制が厳しく、新規参入に高いハードルがあるタクシー業界は、異色の新参者に市場を荒らされることにとりわけ神経を尖らす。

 だが逆風も何のその、Uberはヨーロッパ市場席巻をめざし、野心的な進撃を続けている。ヨーロッパ各地のタクシー運転手はこれに危機感を募らせ、今年6月にはロンドン、パリ、ベルリンなど主要都市で抗議のタクシーが路上に集合、交通をストップさせる事態になった。

 こうした大混乱も、Uberにとっては格好のビジネスチャンスになる。同社はロンドン進出に当たって、主要夕刊紙に全面広告を掲載。最高50%の割引サービスを目玉にした利用拡大キャンペーンが奏功し、その日のうちにロンドンだけで850%利用者が増えたと発表している。

 今や主戦場はドイツに移っている。進出を阻む当局に対し、Uberはここでも逆風を追い風に変えるマジックを発揮。フランクフルトの裁判所は地元のタクシー業界に対する「不正競争」に当たるとして、ピア・ツー・ピアのカーシェアリング斡旋サービス「UberPop(ウーバーポップ)」事業を禁止した。

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

日本郵政、楽天Gの株価回復で850億円の「戻し入れ

ビジネス

三菱UFJ、アジア・欧州の新興企業ファンド 最大7

ワールド

アングル:早期解散の思惑、臨時国会召集日・補正提出

ビジネス

スウェーデン中銀、今後の政策決定会合の見通し不透明

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:日本化する中国経済

特集:日本化する中国経済

2023年10月 3日号(9/26発売)

バブル崩壊危機/デフレ/通貨安/若者の超氷河期......。失速する中国経済が世界に不況の火種をまき散らす

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    本物のプーチンなら「あり得ない」仕草......ビデオに映った不可解な行動に、「影武者説」が再燃

  • 3

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗組員全員死亡説も

  • 4

    NATO加盟を断念すれば領土はウクライナに返す──ロシ…

  • 5

    巨大なクマを飼い猫が撃退! 防犯カメラが捉えた「…

  • 6

    ワグネル傭兵が搭乗か? マリの空港で大型輸送機が…

  • 7

    日本は不況の前例ではなく「経済成長の手本」。中国…

  • 8

    「盗んだバイクで走り出すって......あり得ない」  Z…

  • 9

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

  • 10

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 1

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 2

    最新兵器が飛び交う現代の戦場でも「恐怖」は健在...「スナイパー」がロシア兵を撃ち倒す瞬間とされる動画

  • 3

    本物のプーチンなら「あり得ない」仕草......ビデオに映った不可解な行動に、「影武者説」が再燃

  • 4

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 5

    マイクロプラスチック摂取の悪影響、マウス実験で脳…

  • 6

    これぞ「王室離脱」の結果...米NYで大歓迎された英ウ…

  • 7

    「ケイト効果」は年間1480億円以上...キャサリン妃の…

  • 8

    ウクライナ軍の捕虜になったロシア軍少佐...取り調べ…

  • 9

    ロシア黒海艦隊、ウクライナ無人艇の攻撃で相次ぐ被…

  • 10

    J.クルーのサイトをダウンさせた...「メーガン妃ファ…

  • 1

    イーロン・マスクからスターリンクを買収することに決めました(パックン)

  • 2

    黒海艦隊「提督」の軽過ぎた「戦死」の裏に何があったのか

  • 3

    <動画>ウクライナのために戦うアメリカ人志願兵部隊がロシア軍の塹壕に突入

  • 4

    中国の原子力潜水艦が台湾海峡で「重大事故」? 乗…

  • 5

    コンプライアンス専門家が読み解く、ジャニーズ事務…

  • 6

    「児童ポルノだ」「未成年なのに」 韓国の大人気女性…

  • 7

    サッカー女子W杯で大健闘のイングランドと、目に余る…

  • 8

    「これが現代の戦争だ」 数千ドルのドローンが、ロシ…

  • 9

    「この国の恥だ!」 インドで暴徒が女性を裸にし、街…

  • 10

    ロシア戦闘機との銃撃戦の末、黒海の戦略的な一部を…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中