最新記事

セキュリティーソフト

ウイルス対策ソフトは死んだ?

シマンテックの上級副社長の爆弾発言どおり、ウイルス対策ソフトはもはやサイバー攻撃の45%程度しか食い止められていない!?

2014年5月22日(木)14時37分
リリー・ニューマン

白旗 ウイルスをすべてブロックできないなら残りはどうする? Tony Avelar-Bloomberg/Getty Images

 80年代末に登場して以来、ウイルス対策ソフトは大して変化していない(ように見える)地味な商品だ。アップデートも自動的にダウンロードされ、その働きがディスプレイに表れることはめったにない。存在を実感するときがあるとすれば、コンピューターのスピードがひどく遅くなったときだろうか。

 ウォールストリート・ジャーナル紙によると、ウイルス対策ソフトの大手シマンテックのブライアン・ダイ上級副社長(情報セキュリティー担当)は、ウイルス対策ソフトは「死んだ」と衝撃発言。従来の方針を抜本的に変えることを示唆した。

 ダイによると、シマンテックはもはや「ウイルス対策ソフトを儲かる商品と考えていない」。今後はハッカーをブロックするのではなく、システム内のハッカーを発見して、それがもたらすダメージを最小限に抑えるサービスに力を入れるという。

 実際、サイバーセキュリティー業界は、どんなシステムにも弱点が存在し、ハッカーはそれを利用して侵入してくると認める方向にシフトしている。そうなれば当然、システムを防御する方法も違ってくる。

 これまでのウイルス対策は、ウイルスと弱点のリストを常に更新して、それに対する防御ソフトや修復ソフトを配布するというものだった。新サービスではこういうやり方はしない。

 シマンテックは今後数カ月で、顧客に最新の攻撃について情報提供するとともに、ネットワークサーバーや機器をスキャンして疑わしいコードを発見するサービスを展開していく。

 新たなビジネスはシマンテックの経営面でも重要な課題だ。同社の売上高は3四半期連続で前年同期を下回っている。

 ダイによれば現在、シマンテックの看板商品「ノートン」などのウイルス対策ソフトでは、サイバー攻撃は45%程度しか食い止められていない。今後も1次チェック手段として使うことはできるが、新サービスで補う必要があるという。

 ウイルス対策ソフトの利用者としては複雑な心境だ。

© 2014, Slate

[2014年5月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送米GDP、第1四半期+1.6%に鈍化 2年ぶり

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中