最新記事

個人情報

フェイスブックに友達を売ってない?

「友達を探し出す」機能は確かに便利だが、友人の電話番号やメールアドレスが運営企業の手に渡り、悪用される恐れも

2013年9月17日(火)14時53分
ウィル・オリマス(スレート誌記者)

皮肉な結果 フェイスブックはサービスのためにやったことが、顧客情報の悪用と紙一重に Fanatic Studio/Getty Images

 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に登録するとたいてい、「友達を探す」機能を使うかと尋ねられる。アドレス帳の中から、既にそのSNSに登録している人をリストアップしてくれる──実に便利な機能に思える。氏名やメールアドレスを一人ずつ入力して検索するのはひと苦労だ。

 そこで、あなたは「イエス」のボタンをクリックする。そして、表示されたユーザーの中からSNS上でつながりたい人を選択する。これで、その相手に友達申請が送られる。

 実はこの過程で、あなたはアドレス帳の中の友人や同僚のメールアドレスと電話番号の情報をSNSの内部データベースにごっそり贈呈したことになる。運がよければ、SNSの社員は、あなたより慎重に友人たちの個人情報を扱ってくれるだろう。

 しかし残念ながら、そういうケースばかりではない。朝の6時に上司から義理の母親に至るまで、アドレス帳に載っていた全員に携帯メールを送り付けるかもしれない。

 あるいは、アドレス帳の情報を自社の内部データベースと照合し、既に登録している友人がそのSNSに教えずにいた電話番号やメールアドレスを割り出し、データベースに追加する可能性もある。

 もっとひどい場合は、そのSNS上で友人とつながっている全ユーザーに、その友人の秘密の電話番号やメールアドレスが知られてしまう状況をつくり出しかねない。

 これは、この1年間フェイスブックで起きていたことだ。意図的な漏洩ではなかったが、システムの不具合により、「ダウンロード・ユア・インフォメーション」機能を通じて約600万人の連絡先がほかのユーザーに知られる可能性があった。

 6月にセキュリティー情報サイトの「パケットストーム」がこの問題を指摘。フェイスブックは謝罪し、不具合を修正した。

本人には削除要求権なし

 グーグルやフェイスブック、アマゾンといったオンライン企業に登録した個人情報が100%安全だとは、今や誰も思っていないだろう。だが、友人や同僚があなたの個人情報をSNSに登録しているとは、あまり気付いていないのではないか。

 SNS界では、そのようにして記録された個人情報を「シャドウ・プロファイル」と呼ぶ。シャドウ・プロファイルに関しては不条理な点がある。もし、あなたが自分の同意なしに電話番号やメールアドレスがフェイスブックのシャドウ・プロファイルに登録されていることを知っても、あなたにはそれをどうすることもできない。

 あなたが電話番号やメールアドレスを友人に教え、友人がそれを自分のアドレス帳に記せば、それはその友人の個人情報だ。そして、友人がアドレス帳へのアクセスをフェイスブックに許せばその情報はフェイスブックのものになる。あなたが削除を求めても、フェイスブックは応じない。あなたの情報でない以上、あなたには削除を要求する権利がないからだ。

 フェイスブックは、個人情報を盗むためにこういう仕組みをつくったわけではない。ユーザーへのサービスのつもりだ。実際、このシステムがあるおかげで、友人同士がフェイスブック上でお互いを探しやすくなっていることは間違いない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米貿易赤字、3月は0.1%減の694億ドル 輸出入

ワールド

ウクライナ戦争すぐに終結の公算小さい=米国家情報長

ワールド

ロシア、北朝鮮に石油精製品を輸出 制裁違反の規模か

ワールド

OPECプラス、減産延長の可能性 正式協議はまだ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中