最新記事

IT企業

最強企業アップルの終わりの始まり?

もはや革新的な新商品は登場せず、「小さな改善」ばかりが目につくのはなぜか

2012年12月3日(月)15時29分
アンドルー・ブラム

期待外れ 携帯するには便利になったけれど、これといった驚きのないiPadミニ Robert Galbraith-Reuters

 アップルはその使命を果たした──。今年10月に行われたiPadミニの発表は、そんな感慨を抱かせた。「画期的な製品を生み出し、その後何年もかけて最新の技術を駆使し、非妥協的にアップグレードしていく」と、発表会場でフィル・シラー上級副社長(マーケティング担当)は自社の流儀を説明した。

 実際、97年にスティーブ・ジョブズが経営トップに返り咲いてから、アップルはこの流儀で成功してきた。ジョブズが開発を渋り、他社に対抗するためだけに作られたiPadミニを見ると、アップルの将来が心配になる。「妥協せずにアップグレードしていく」のはいいが、「画期的な製品を生み出す」ほうはどうなのか。

 ジョブズ復帰後の15年間に、アップルは革新的な製品を3つ生んだ。iPod、iPhone、そしてiPadだ。その後は漸進的な進歩のみ。メモリーが増え、画質が良くなり、ネット接続が高速化し、電池の寿命が延び、カメラ機能が向上したといった程度だ。

革新のヒントはグーグルに

 多少薄く縦長になり、高速通信対応になったiPhone、ペーバーバックサイズのiPad、より薄型になったデスクトップ。こうした小さな進化を続けるだけでも、アップルはあと数年業界のリーダーの地位にとどまれるだろう。だが、次なる革命は期待できそうにない。

 そもそも今後、オリジナル版のマックOSやiPhoneに匹敵するような新製品・新技術が登場するとしたら、それはどんなものになるのか。

 グーグルが開発中のグラス(現実の視界にデジタルデータが重なって見える眼鏡型コンピューター)が1つのヒントになりそうだ。人間のように学習して賢くなる新世代コンピューターの開発も進められている。

 だが、こうした技術が実現するのはまだ先の話だ。鳴り物入りで発表し、先行予約を受け付けたところで、このところのアップルが打ち出すのは小さな改善のみ。エボルーション(進化)を遂げても、レボルーション(革命)には程遠い。

[2012年11月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中