最新記事

日中関係

反日による日本人欠場でゲーム大会中止に

日中の尖閣問題からアメリカのイラン制裁まで、国家間の紛争とゲームにつきまとう深い因縁

2012年9月20日(木)16時40分
ジェブ・ブーン

とばっちり 中国では大人気のエレクトロニック・スポーツだが…… Kim Kyung Hoon-Reuters

 尖閣諸島をめぐる日本と中国の対立は、思いがけない分野に波及した。

 今月末から広州市で開かれる予定だったマンガやゲームの展示会が開催中止に追い込まれ、トップゲーマーが集まる「eスポーツ」の世界大会、「インテル・エクストリーム・マスターズ」も中止になった。先週末に中国各地で、日本の尖閣諸島国有化に反発するデモと暴動が巻き起こったからだ。

「大会を楽しみにしていたゲームファン、とくに中国のファンには申し訳ない。残念ながら中止の背景にある問題は我々のコントロールを超えたもので、主催者の決定を尊重するしかない」と、インテル杯を主催するドイツのプロゲーム団体「エレクトロニック・スポーツ・リーグ」のミカル・ビルハルツCEOはコメントした。

 中止の理由は、反日デモを恐れたためというより、参加者の多数を占める日本人が入国できなかったり、ビザを取り消されたため。

 広州の大会は、来年3月の世界大会を前にした最終トーナメントだったので、主催者側は別の会場を探し始めている。広州大会には北米をはじめ欧州、アジアからも多くのプロゲーマーが集結する予定だった。

オンラインゲームへの参加遮断も

 ゲームと国家間紛争は、我々の想像以上につながりが深い。アメリカのゲームメーカー「ブリザード・エンターテインメント」は、米政府の対イラン経済制裁の一環として、イラン人プレイヤーがバーチャル・プライベート・ネットワーク(VPN)を通じてオンラインゲームに参加することを遮断した。

 2010年に韓国の延坪島を北朝鮮が砲撃した時には、韓国の金泰栄(キム・テヨン)国防相(当時)が、砲撃への対応が遅れて批判の矢面に立たされた。韓国軍の反撃までなぜ13分もかかったか問い詰められた金泰栄は、こう答えた。「これはゲームではない」。金泰栄はその後、一連の不手際の責任を取って辞任している。

 イラン政府も政治的な目的でゲーム開発を援助している。イラン政府が支援している団体「イスラム学生連盟」は、「サルマン・ラシュディ(『悪魔の詩』の著者)の緊張の生活と死刑の執行」というゲームを開発中だ。

 このゲームがシューティングになるのか、戦闘シミュレーションになるのか、それともまったく別のゲームになるのかはまだ分からない。ただタイトルから察すると、プレイヤーはイランの元最高指導者、ホメイニ師によるラシュディへの「死刑宣告」を実行することになるだろう。

 一方イランは、昨年発売された米メーカーの戦争ゲーム『バトルフィールド3』の設定が米兵によるイラン侵入だったため、国内での販売を禁止している。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

加州高速鉄道計画、補助金なしで続行へ 政権への訴訟

ワールド

コソボ議会選、与党勝利 クルティ首相「迅速な新政権

ワールド

訂正中国軍、台湾周辺で「正義の使命」演習開始 30

ビジネス

中国、無人航空機を正式規制 改正法来年7月施行
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中